2021年11月3日水曜日

桃山人夜話巻二 その37

P24前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

鎌 倉 尓天戸根の八 郎 と云 毛の有 家来 の

可満くら  と袮 者ちらう いふ  阿りけらい

かまくらにてとねのはちろうというものありけらいの


死多る越負 櫃 といふ毛の尓入れ天由井の浦

し   於ひびつ      い  ゆゐ うら

したるをおいびつというものにいれてゆいのうら


奈る海 底 尓捨 多り个る可゛其 後 もとの所  へ浪 の

  可以て以 春て      曽のゝち   ところ 奈ミ

なるかいていにすてたりけるが そののちもとのとろこへなみの


うち上 天負 櫃 の中 与り唄 越う多ふ聲 の志

  阿げ 於ひびつ 奈可  う多    こゑ

うちあげておいびつのなかよりうたをうたうこえのし


个る越極 楽 寺といふ寺 の僧 の聞 つけ天行

   ごくらくし   天ら 曽う きゝ   ゆき

けるをごくらくじというてらのそうのききつけてゆき


(大意)

鎌倉に戸根の八郎というものがいた。家来が

死しんでしまい負櫃というものに入れて由井の浦

の海底に捨てたのだが、その後もとのところへ波で

打ち上げられた。この負櫃の中より歌声が聞こえて

きたのを極楽寺という寺の僧が聞きつけて行(って)


(補足)

「鎌」のくずし字は当分読めそうにもありません。

「由井の浦」、由比ヶ浜のこと。

「もの」と続けて使われるときは変体仮名「毛」は「こ」+「ち」のようなかたちなってます。

「負櫃」。「棺桶」というように亡くなった人は桶(or樽)に座るようにおさめられました。それを背負って運ぶこともあったそうです。

 

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