P24前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
鎌 倉 尓天戸根の八 郎 と云 毛の有 家来 の
可満くら と袮 者ちらう いふ 阿りけらい
かまくらにてとねのはちろうというものありけらいの
死多る越負 櫃 といふ毛の尓入れ天由井の浦
し 於ひびつ い ゆゐ うら
したるをおいびつというものにいれてゆいのうら
奈る海 底 尓捨 多り个る可゛其 後 もとの所 へ浪 の
可以て以 春て 曽のゝち ところ 奈ミ
なるかいていにすてたりけるが そののちもとのとろこへなみの
うち上 天負 櫃 の中 与り唄 越う多ふ聲 の志
阿げ 於ひびつ 奈可 う多 こゑ
うちあげておいびつのなかよりうたをうたうこえのし
个る越極 楽 寺といふ寺 の僧 の聞 つけ天行
ごくらくし 天ら 曽う きゝ ゆき
けるをごくらくじというてらのそうのききつけてゆき
(大意)
鎌倉に戸根の八郎というものがいた。家来が
死しんでしまい負櫃というものに入れて由井の浦
の海底に捨てたのだが、その後もとのところへ波で
打ち上げられた。この負櫃の中より歌声が聞こえて
きたのを極楽寺という寺の僧が聞きつけて行(って)
(補足)
「鎌」のくずし字は当分読めそうにもありません。
「由井の浦」、由比ヶ浜のこと。
「もの」と続けて使われるときは変体仮名「毛」は「こ」+「ち」のようなかたちなってます。
「負櫃」。「棺桶」というように亡くなった人は桶(or樽)に座るようにおさめられました。それを背負って運ぶこともあったそうです。
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