P20前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
第 四十 三 夜 の楽屋
多゛以志ゞ うさんよる がくや
だ いしじゅうさんよるのがくや
木 偶 泥工の坊 といへども仕 ふ人 の魂 を入れぬる時
尓ん个゛うでく 本゛う つ可 ひと 多満しひ い とき
にんぎょうでくのぼ うといえどもつかうひとのたましいをいれぬるとき
ハ其 意 性 根 尓入りて人 形 尓止 ること芝 居の人 の
曽のこゝろせ以こん い 尓ん个゛う とゞ満 し者゛ゐ ひと
はそのこころせいこんにいりてにんぎょうにとどまることしば いのひとの
志る所 奈り野呂松三 左衛門 可゛人 形 をま多ぎ多類
ところ のろまさんざへもん 尓ん个゛う
しるところなりのろまさんざえもんが にんぎょうをまたぎたる
毛の於こり越ふるい其 人 形 尓王びことし天癒 多り夜
曽の尓ん个゛う いえ よる
ものおこりをふるいそのにんぎょうにわびごとしていえたりよる
(大意)
第四十三夜の楽屋
操り人形といえども、それをつかう人が魂をこめたときに
その心が人形の心髄に入って人形にとどまることは、芝居に
たずさわる人の知るところである。野呂松三左衛門の人形をまたいでしまった
者が熱病におかされ、その人形に詫び言をして癒えたことがあった。夜(の楽屋に)
(補足)
「四十三」の振り仮名が読みづらいですが「志ゞうさん」。
「楽屋」(がくや)、変体仮名ではなく平仮名の「が」。
「木偶泥工の坊」、「でくのぼう」は「木偶の坊」のことですが、こちらは木彫りの人形の操り人形。粘土や土をこねてこしらえた人形もありますから「泥工」(でく)としたのでしょう。変体仮名「个゛」(げ)がすぐ左の変体仮名「曽」(そ)ににています。
「魂」(多満しひ)、「し」があります。
「ま多ぎ多類」、変体仮名「類」(る)はひさしぶり。
「王びことし天」、「こと」は合字。「を」に見えなくもありませんが、すぐ右の行に「を」があり比較するとやはり違います。
題名の「夜の楽屋」をみただけでさて何が起こるのかと、なにかゾクッとしたものを感じます。
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