2022年3月22日火曜日

桃山人夜話巻五 その44

P26後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

の首 ハ水 中  尓争  ふや可゛て又 重 可゛首 ハ五郎 可゛

 くび 春いち う 阿ら曽     ま多しげ  くび ごらう

のくびはすいちゅうにあらそうやが てまたしげが くびはごろうが


首 尓くひふせら連んと春る時 五郎 可゛腰 尓附 多

くび           ときごらう  こし つ希

くびにくいふせられんとするときごろうが こしにつけた


る小三 太 可゛首 おどりいで天五郎 可゛首 越可みふせ

 こさん多゛  くび      ごらう  くび

るこさんた が くびおどりいでてごろうが くびをかみふせ


多りかく三 人 可゛首 くひ争  ふ天夜るハ火 ゑん越

    さん尓ん  くび  阿ら曽  よ  くハ  

たりかくさんにんが くびくいあらそうてよるはか えんを


ふき昼 ハ海 水 巴  の如 くなれ者゛巴  可゛渕 と名附 多り

  ひる 可い春いともえ ごと     ともえ  ふち 奈づけ

ふきひるはかいすいともえのごとくなれば ともえが ふちとなづけたり


(大意)

(ふたつ)の首は水中で争った。やがて又重の首が五郎の

首に食いふせられようとしたとき、五郎の腰に付け下げ

られていた小三太の首がおどり出て五郎の首を咬みふせた。

このように三人の首が食い争って、夜は火炎を

吹き、昼は海水が巴紋のように渦巻くので巴が淵と名付けられた。


(補足)

「附多る」、「る」はほとんどが変体仮名「留」(る)で丸のようなかたちですけどここでは平仮名。振り仮名「つ希」、変体仮名「希」(け)だとおもうのですけど。

「火ゑん越」、ここの変体仮名「越」(を)はもとのかたちが残っています。

「昼」のくずし字、「日」と「一」以外が冠のようになってます。

 三つの首の争う様が、前段の「夜の楽屋」の話と重なって楽しめました。

 

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