P26後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
の首 ハ水 中 尓争 ふや可゛て又 重 可゛首 ハ五郎 可゛
くび 春いち う 阿ら曽 ま多しげ くび ごらう
のくびはすいちゅうにあらそうやが てまたしげが くびはごろうが
首 尓くひふせら連んと春る時 五郎 可゛腰 尓附 多
くび ときごらう こし つ希
くびにくいふせられんとするときごろうが こしにつけた
る小三 太 可゛首 おどりいで天五郎 可゛首 越可みふせ
こさん多゛ くび ごらう くび
るこさんた が くびおどりいでてごろうが くびをかみふせ
多りかく三 人 可゛首 くひ争 ふ天夜るハ火 ゑん越
さん尓ん くび 阿ら曽 よ くハ
たりかくさんにんが くびくいあらそうてよるはか えんを
ふき昼 ハ海 水 巴 の如 くなれ者゛巴 可゛渕 と名附 多り
ひる 可い春いともえ ごと ともえ ふち 奈づけ
ふきひるはかいすいともえのごとくなれば ともえが ふちとなづけたり
(大意)
(ふたつ)の首は水中で争った。やがて又重の首が五郎の
首に食いふせられようとしたとき、五郎の腰に付け下げ
られていた小三太の首がおどり出て五郎の首を咬みふせた。
このように三人の首が食い争って、夜は火炎を
吹き、昼は海水が巴紋のように渦巻くので巴が淵と名付けられた。
(補足)
「附多る」、「る」はほとんどが変体仮名「留」(る)で丸のようなかたちですけどここでは平仮名。振り仮名「つ希」、変体仮名「希」(け)だとおもうのですけど。
「火ゑん越」、ここの変体仮名「越」(を)はもとのかたちが残っています。
「昼」のくずし字、「日」と「一」以外が冠のようになってます。
三つの首の争う様が、前段の「夜の楽屋」の話と重なって楽しめました。
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