2022年3月14日月曜日

桃山人夜話巻五 その37

P23前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

きうでハちぎれ天血綿 のくれ奈ゐ尓曽ミ怒 れ

        ち王多        い可

きうではちぎれてちわたのくれないにそみいかれ


るあ連者゛笑 ふ有 毛と是 人の 霊 越写 せし故 也

     王ら 阿り  これひと 連以 うつ  ゆへ

るあれば わらうありもとこれひとのれいをうつせしゆえなり


慶 長 の比 迄 ハ人 形  ハ皆 土 頭   奈りし可゛伏 見の満 江

个いてう ころまで 尓ん个゛う ミ奈つち可゛しら     ふしミ まんこう

けちょうのころまではにんぎょうはみなつちが しらなりしが ふしみのまんこう


斎 始   天木を以 天彫 し与りこの可多木頭   とハ

さい者゛じめ き もつ ゑり       き可゛しら

さいは じめてきをもってえりしよりこのかたきが しらとは


(大意)

(眼を開)き、腕はちぎれて血綿が紅に染まり、怒って

いるものもあれば、笑うものもある。もともとこれらは人の霊を人形に移したためだからである。

慶長の頃までは人形はみな土頭であったが、伏見の満江斎

がはじめて木を彫って頭を作ってからというもの、木頭に

(なったという)


(補足)

読みにくくわからないところが何箇所かありました。いつもながら変体仮名「可」(か)と「う」「ら」は注意です。

「もと」、ここの「も」の変体仮名のかたちは「し」のようにかいて、最後がそのまま左回りに上がり横切ってSを下からかくようにして、今度は右回りに下に流すような感じ。最後の行にある「もの」の変体仮名「も」は小さな平仮名で「こ」+「ち」のような感じ。

「彫し」(ゑりし)、辞書には「彫る・鐫る」とあります。かたいものをくりぬくことを「えぐる」といいますが、「える」の名残でしょうか。

 

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