P19 東京国立博物館蔵
(読み)
と云フどう屋らきミ能王るいヤツ故 此 方 カラ
というどうやらきみのわるいやつゆえこのほうから
ハ見ぬ婦りをして居レど兎角尓なれ\/しく
はみぬふりをしておれどとかくになれなれしく
口 をきく故 先キヱ行クべしとて浅 の市 ニて駕
くちをきくゆえさきえゆくべしとてあさのいちにてか
籠尓能りよし田より馬 ニ乗リ小月 を越ヘ長
ごにのりよしだよりうまにのりおづきをこえちょう
府迄 三 里堤(ツゝミ)の上 を通 り其 比 ハゼと云フ
ふまでさんり つつみ のうえをとおりそのころはぜという
うるし能木実ハ蝋 を取ル此 邊 畑 ノ間 其 外
うるしのきみはろうをとるこのあたりはたけのあいだそのほか
一 面 ニ植ヱ皆 紅 葉 して錦(ニシキ)能如 し漸 ク尓
いちめんにうえみなこうようして にしき のごとしようやくに
して長 府(フ)能問 屋場尓至 夜 ノ五 時 比 なり
してちょう ふ のといやばにいたるよるのいつつどきころなり
夫 より駕籠ニのり行ク尓闇 夜なり駕籠の
それよりかごにのりゆくにやみよなりかごの
内 ニてトロ\/と眠 り目を覚 し个る尓誠 ニ山
うちにてとろとろとなむりめをさましけるにまことにさん
(大意)
略
(補足)
「浅の市」、厚狭(あさ)。日本国山口県西部の地名。古地図では「原狭市」とあって、こちらが間違っているようです。
「よし田」、吉田。吉田村の左下に「厚狭郡」とあって、こちらは正しそう。
「小月(おづき)」、「長府」
「問屋場」、『といやば【問屋場】江戸時代,街道の宿駅で人馬の継ぎ立てなど種々の事務を行なった所。伝馬所。とんやば』
うるしや櫨(ハゼ)の紅葉はモミジにまさるほどに見事です。
六部はそのまま追い剥ぎになるやもと、江漢さんは恐れて駕籠や馬をつかって(なんせ金は道中、画をかきガッポリ稼いでます)、ようやく長府に夜8時頃到着、ホッとしたことでしょう。しかし夜なのに再び駕籠にのって闇夜を進みます。
0 件のコメント:
コメントを投稿