2021年10月31日日曜日

桃山人夜話巻二 その34

P22後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

父 といさ可ひし天親 越追ふとき爪 づき天石 尓天

ちゝ       於や 於   つま   いし

ちちといさかいしておやをおうときつまずきていしにて


膝 越うちや婦゛り曽れ与りし天人 面 て うとハ奈り

ひざ             尓んめん

ひざをうちやぶ りそれよりしてにんめんちょうとはなり


多ると楚゛俗  尓まゝくハふと云 難 病  奈り道 尓叶

     曽゛く       いふ奈んべ う  ミち 可奈

たるとぞ ぞ くにままくわうというなんびょうなりみちにかな


ハざるふるまひ春る時 ハい可奈る悪 病  を受 んも斗  可゛多し

         とき     あくべ う うけ  者可り

はざるふるまいするときはいかなるあくびょうをうけんもはかりが たし


(大意)

父と言い争いになって、親を追うときにつまずき、石に

膝を打ち付け怪我をしてしまった。そのために(その膝の傷が)人面疔になって

しまったということだ。俗に「ままくはう(飯をくおう)」という難病である。道に

はずれた振る舞いをするときは、どんな悪病を受けるかは予測しがいたいものなのだ。


(補足)

道からはずれたことをしてはいけませんよというお話なのですが、

もっと二口女の正体をいろいろかいてほしかった。

 

2021年10月30日土曜日

桃山人夜話巻二 その33

P22前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

こゑのひ曽\/と春れバ聞 耳 立 る尓王可゛心  得違

           きゝミゝ多つ     こゝろえ多可゛ひ

こえのひそひそとすればききみみたつるにわが こころえたが い


与り先 妻 の子越殺 せり阿や満てり\/   といひし

  せんさ以 こ ころ  

よりせんさいのこをころせりあやまりてあやまりてといいし


登楚゛誠  尓恐 るべきこと奈り个り万 治年 中  尓

   まこと 於曽         まんじ袮んぢ う

とぞ まことにおそるべきことなりけりまんじねんじゅうに


も人 面 疔  と天膝 尓口 阿る者 出 来 り天東 武の医

 尓んめんて う  ひざ くち  ものいでき多  とうぶ ゐ

もにんめんちょうとてひざにくちあるものいできたりてとうぶのい


家尓治療  を乞 しこと阿り是 ハ農 民 奈り个る可゛

可 ぢ里やう こひ     これ のうミん 

かにちりょうをこいしことありこれはのうみんなりけるが


(大意)

(のちには)ひそひそと話し声がするので、聞き耳をたてたところ「自分の間違った行い

で先妻の子どもを殺してしまった。すまなかった。すまなかった。」と言っていた

とのことだ。まことに恐るべきことである。万治年間(1658〜61)に

も人面疔という膝に口があるものが出てきて、東武(江戸)の医

者に治療を乞うたことがあった。これは農民であったが


(補足)

「こゑのひ曽\/と春れバ」、「こゑ」がわかりにくいですが、続けて読むと「ひ曽\/と」とあるので「声」とわかりました。

「聞」のくずし字、「門」は冠のようになってます。

「誠に」、「成」のくずし字が「斗」のような形になってます。

「恐」のくずし字は「心」の上が「旧」のようなかたち。「思」と区別。

 

2021年10月29日金曜日

桃山人夜話巻二 その32

P21後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

頭  王れ天血おび多ゞしく出 し可゛疵 口 さら尓癒 るこ

可しら   ち      いで   きづぐち   い由

かしらわれてちおびただしくいでしが きずぐちさらにいゆるこ


登奈く唇   の可多ちを奈し天骨 ハ出 天歯の如 く尓

   くちびる        本袮 いで 者 ごと

となくくちびるのかたちをなしてほねはいでてはのごとくに


奈り肉 つき上  りて舌 尓類 せり時刻 越とりてい多

  尓く  阿可゛  志多 る以  じこく 

なりにくつきあが りてしたにるいせりじこくをとりていた


むこと苦痛 多え可゛多く食  を入るゝ時 ハい多ミを

   くつう      志よく い  とき

むことくつうたえが たくしょくをいるるときはいたみを


和 らげ多り依 天両  口 阿る可゛ごとし後 尓ハ毛の云

や王    よつ 里やうくち       のち    いふ

わわらげたりよってりょうくちあるが ごとしのちにはものいう


(大意)

頭が割れて血がおびただしく出たが、傷口は少しも癒えるこ

となく、唇の形になってきて、骨が出て歯のように

なり、肉が盛り上がってきて舌のようなものになった。時によっては

痛み、その苦痛は耐え難く、(口のようなところへ)食べ物を入れるときは痛みを

和らげることができた。よって(頭の前後の)両方に口があるようであった。後には

(ひそひそという話し声)


(補足)

「時刻越とりて」、「と」の一画目が「ー」になっていてすぐにはわかりませんでした。この部分の意味も辞書を調べて悩みました。辞書に「 (「時にとって」「時にとりて」の形で)場合によって。時によって。「人,木石にあらねば,時に―・りて,物に感ずる事なきにあらず」〈徒然草•41〉」とあったのでこれを採用。

「上りて」、こちらの「上」のほうがよほど平仮名「と」にみえます。

 二口は生まれながらにあったのではなく、このような子どもいじめ殺しがあって、その後の事故によってできた傷口が原因でした。現代でもありそうなことです。

 

2021年10月28日木曜日

桃山人夜話巻二 その31

P21前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

食  を阿多へ須゛遂 尓病  登奈りて餓 死尓し多り其

志よく      つい やまひ    うへじ    曽の

しょくをあたえず ついにやまいとなりてうえじにしたりその


後 四十 九日 目 尓当 りて其 家 尓天薪  を割 个る可゛

のち志ゞ うく尓ちめ 阿多  曽のいゑ  多きゞ 王り

のちしじゅうくにちめにあたりてそのいえにてたきぎをわりけるが


男  の与き越ふり上 多るうし路越其 妻 の通 り可ゝり

をとこ      阿げ      曽のつま とを

おとこのよきをふりあげたるうしろをそのつまのとおりかかり


し越志ら須゛し天過   て妻 可゛頭  のうしろ尓阿て多り

        阿やまち つま  可うべ   

しをしらず してあやまちてつまが こうべのうしろにあたりて


(大意)

(子に)食事を与えずついには病気になって餓死してしまった。

その後、四十九日目に当たる日のこと、その家で薪を割っている

男が斧を振り上げたちょうどそのときに妻がうしろを通りかかった

ことに気づかず、過って妻の頭のうしろに斧を当ててしまった。

(補足)

「餓死尓し多り」、「餓」は振り仮名があるからと手抜きしたような感じ。「し」が虫食いと重なりました。

「四十九日目」、振り仮名「志」のほうに「゛」がついてしまってます。

「よき」、斧(おの)、手斧(ておの)

「通り可ゝり」、「ゝ」があります。

 

2021年10月27日水曜日

桃山人夜話巻二 その30

P20後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

業 病  登も云 べき可何 連尓もミづ可らの悪心  与り

ごうびやう  いふ   いづ        あくしん

ごうびょうともいうべきかいずれにもみずからのあくしんより


引 出  春病  奈り此 こと毛路こし尓もありむ可し

ひきい多゛ や満い  この      

ひきいだ すやまいなりこのこともろこしにもありむかし


日 本 尓も下 総 の国 千葉 という所  尓継 母 ありて

尓つ本ん  志もふさ く尓ち者゛   ところ まゝ者ゝ

にっぽんにもしもふさのくにちば というところにままははありて


己 れ可゛うミの子のミ越愛 し天先 妻 の子耳

をの          あ以  せんさ以  に

おのれが うみのこのみをあいしてせんさいのこに


(大意)

やはり業病と云うべきなのかもしれんない。いずれにしてもみずから悪いことを

しようという心より引き出される病である。この病は唐土(もろこし)にもあり、昔

日本にもあった。下総の国、千葉というところに継母がいて、

自分が産んだ子どもだけを愛して、先妻の子に

(補足)

「ミづ可らの」、「ミ」の三画目が流れています。

「毛路こし」、たびたび出てきているのでお馴染みです。

「先妻の子耳」、変体仮名「耳」(に)はあまりおめにかかりません。めずらしい。たいていは「尓」「丹」「仁」など。

 読んでいると「頭脳唇(ふたくち)」はもしかしたら、本当にいたのかもしれないと、いるのかもしれないと・・・でも女としているところが気になる。継父(ままちち)、ーーーこの読みは英語のママと日本語の父が一緒になっているのでニヤリとしてしまいますーーーだっているはずで、そうすると長い髪の毛が蛇のようになって食べ物をはこべなくなり、怖さが半減してしまう。このあとこの話はどう展開するのか?

 

2021年10月26日火曜日

桃山人夜話巻二 その29

P20前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  十  七 二 口 女

多゛以志゛うしちふ多くちをん奈

だ いじゅうしちふたくちおんな


頭脳唇 人 面 疔  ハ業 病  のごとく尓いひ奈せども古

ふ多くち尓んめんて う ごうびやう           ふる

ふたくちにんめんちょうはごうびょうのごとくにいいなせどもふる


き医書 尓も出 多りされども病  の起 りをきく尓多

 ゐしよ  いで      や満い をこ     於本

きいしょにもいでたりされどもやまいのおこりをきくにおお


くハ个んどん邪  見 無慙 放 逸 の輩    尓阿り志可らバ

      志゛や个んむざん本ういつ とも可゛ら  

くはけんどんじ ゃけんむざんほういつのともが らにありしからば


(大意)

第十七二口女

「頭脳唇(ふたくち)」と「人面疔(にんめんちょう)」は業病のように言われるが

古い医書にも出ている。しかし病の原因をきくと、多くはけちで欲深く意地悪くて恥知らずのだらしがない者にみられる。だから

(補足)

人面疔(にんめんちょう)、人面瘡(じんめんそう)とも。悪性のできものが人の顔をしている。

業病、悪いおこないの報いとしてかかるいわれる,なおりにくく,つらい病気。

 いきなり出だしから読めません。振り仮名「ふ多くち」は当て字なので漢字がわかりません。「頭脳唇」の漢字3文字とわかるとあぁなるほどとなるのですが・・・

「ごとく尓」、「尓」が「ふ」にみえます。

「个んどん邪見無慙放逸」、よくもまぁこれだけ人をこきおろす単語を並べたもの。それもいまではほとんど死語です。講談で使われそうな言い回しかな。

 

2021年10月25日月曜日

桃山人夜話巻二 その28

P19後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

い天死し多り旧  鼠よ奈\/尓来 り天猫 尓乳汁を

  し   きう 曽     き多  袮こ ちゝ

いてししたりきゅうそよなよなにきたりてねこにちちを


与 へ天五疋 共 尓育  川こと越得多り彼の旧  鼠其

あ多  ごひきとも 曽多゛    え  可 きう 曽その

あたえてごひきともにそだ つことをえたりかのきゅうそその


後 ゆく可多を志ら須゛余 り尓奇談  奈り登天志るし

のち         阿ま  き多゛ん  

のちゆくかたをしらず あまりにきだ んなりとてしるし


置 多るを写 し天曽良  といふ毛の誹 諧 師の芭

於き   うつ  曽里やう     者い可いし 者゛

おきたるをうつしてそりょうというものはいかいしのば


蕉  尓見せし尓猫 の鼠  を育   しことも阿りしと答  しと楚゛

せう  ミ   袮こ 袮づミ 曽多゛て        こ多へ

しょうにみせしにねこのねずみをそだ てしこともありしとこたえしとぞ


(大意)

(食らっ)て死んでしまった。年とった鼠は夜な夜なやってきて子猫に乳を

与え、五匹ともに育つことができた。かの年とった鼠はその

後、行方知らずになった。(これらのはなしが)あまりに奇談であるからと記して

あったものを曽良というものが写して、俳諧師の芭蕉

に見せたたところ、「猫が鼠を育てたこともあるよ」と答えたそうだ。


(補足)

「乳汁」、(ちちじる)ではなく、これで(ちち)。

「育川こと越得多り」、変体仮名「川」(つ)。「こと」は合字。

「彼の旧鼠」の次に「丶」があります。何でしょうか。

「曽良」、振り仮名が「そりょう」となっています。

最後の行に長い平仮名「し」が韻をふむように三つ続いています。

 狼が人の子をそだてたり、また実際に犬の背に子猿がしがみついて育てられるのをみたこともあります。いろいろなんですね。恐れ慎むべきは人の心なのでしょう。