2021年12月7日火曜日

桃山人夜話巻三 その28

P16後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

天笑 へり目も奈く鼻 も奈く耳 も奈く眉 も奈し

 王ら      者奈   ミゝ   ま由

てわらえりめもなくはなもなくみみもなくまゆもなし


只 口 のミあき天个゛ら\/と笑 ふる其 口 の大 き

多ゞくち           王ら  曽のくち 於本

ただくちのみあきてげ らげらとわらふるそのくちのおおき


さ箕の如 しと有 もろこし尓も可ゝる化 物 ハ有 尓や

 み こと  あり         バけもの 阿る

さみのごとしとありもろこしにもかかるばけものはあるにや


(大意)

(振り向い)て笑った。目もなく鼻もなく耳もなく眉もなかった。

ただ口だけをあけてゲラゲラと笑っていた。その口の大きさは

箕のほどもあった」。唐土(もろこし)にもこのような化け物はいるのであろうか。


(補足)

「可ゝる化物」、「ゝ」を変体仮名「多」(た)と読み間違えてしまいました。

「有尓や」、振り仮名「阿る」 の「る」はほとんど「゜」。変体仮名「尓」が英小文字筆記体「y」のようにあります。

 はやく歯黒べったりの画をみたいのですが、このあと3頁目になります。

 

2021年12月6日月曜日

桃山人夜話巻三 その27

P16前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  廿   三 歯黒 遍゛つ多り

多゛以尓志゛うさん者ぐろ

だ いにじゅうさんはぐろべ ったり


歯ぐ路べつ多りをうる里 女  とも又 東 国 尓天ハのつ遍゛ら

者           をん奈  ま多とうごく 

はぐろべったりをうるさとおんなともまたとうごくにてはのっぺ ら


坊  とも云 多 くは狐狸の化 曽こ奈ひし奈り新 燈 開

本゛う  いふ於本  こり 者け       志んとう可い

ぼ うともいうおおくはこりのばけそこないしなりそんとうかい


語尓水 神 の本こらの前 尓天女  尓阿ふ神 の名越

ご 春以しん     まえ  をん奈   可ミ

ごにすいしんのほこらのまえにておんなにあうかみのなを


志りつゝ女  尓問ふ答 へ須゛して行 袖 をひ个バ振 むき

    をん奈 と こ多     ゆく曽で    ふり

しりつつおんなにとうこたえず してゆくそでをひけばふりむき


(大意)

第二十三歯黒べったり

歯黒べったりを売る里の女とも、また東国では「のっぺら坊」

とも言われている。多くは狐や狸の化けそこなったものである。新燈開語

に次のようにある。「水神の祠(ほこら)の前で女に会った。神の名を

知ってはいたがその女に尋ねてみた。答えずに行こうとするので袖を引いたところ振り向い(て)


(補足)

「うる里女」、変体仮名「里」(り)ではおかしいので、漢字の「里」で里女(さとおんな)。

「のつ遍゛ら坊」、変体仮名「遍゛」(べ)は「゛」が付いていますが発音は半濁点「゜」で「ぺ」。

「水神」の「神」はほぼ楷書ですが、同じ行の下にある「神の名」ではくずし字になってます。

「本こら」、文章の流れから「祠」(ほこら)とわかりますが、「こら」の読みが悩む。

 

2021年12月5日日曜日

桃山人夜話巻三 その26

P15後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

身ハ只 化  しのゝ露 尓さらし天鳥辺野のつ由と消 奈ん

ミ 多ゞあ多゛   つ由      への    きゑ

みはただあだ しののつゆにさらしてとりべのつゆときえなん


七 \/日  の奈り行 を恋 尓迷 ふ輩   尓示 し天無常  を

志ち  志゛つ   ゆき こひ まど とも可ら 志め  むせ う

しちしちじ つのなりゆきをこいにまどうともがらにしめしてむじょうを


歓  じさせつ序  ハ未来 佛 果 の縁 尓ひくへし登天

くハん    ついで ミら以ふつくハ ゑん

か んじさせつついではみらいぶっ かのえんにひくべしとて


御 身を野曝  とし給 ひしハ有 可゛多可り个る例  奈里

於んミ のざらし  多満   あり       多めし

おんみをのざらしとしたまいしはありが たかりけるためしなり


(大意)

身はただ、化野(あだしの)の露にさらして、鳥辺野(とりべの)の露と消えたいのです。四十九日までの朽ち果てようを恋に迷う人たちにしめして、人の無常をかんじさせたいのです。そのようにすることはこののち成仏するきっかけともなりましょう」と仰っしゃり、御身を野ざらしになさったのはほとんど例にない行いであった。


(補足)

「鳥」のくずし字が平仮名二文字にもみえますが、「鳥辺野」という地名。

「七\/日」、漢字一文字なので「七ゝ日」ではないとかとおもうのですが。辞書には「七七日」(しちしちにち)とあります。または(なななぬか)。現在では四十九日。

「迷ふ」、振り仮名が「まよ」ではなく「まど」。

振り仮名「とも可ら」、「と」の二画目が左上から始まっているので読み間違えやすい。

「ひくへし」、「く」を読みとばしそう。

「し給ひし」、「し」は変幻自在。

「有可゛多可り个る例奈里」、ここの「有難い」は感謝するの意ではなく、有るのが難しいと文字通りの意味でしょうか。めったにないこと、珍しい出来事、他に例をみない。

 檀林皇后は橘(たちばなの)嘉智子(かちこ)(786年〈延暦5年〉- 850年6月17日〈嘉祥3年5月4日〉)、嵯峨天皇の皇后とあります。なんとも昔の人なのでした。しかし死に際しての心意気は現在でもいろあせることなく立派なことであります。

 

2021年12月4日土曜日

桃山人夜話巻三 その25

P15前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  廿   二帷子    辻

多゛以尓志゛う尓可多びら可゛つじ

だ いにじゅうにかたびらが つじ


檀  林 皇  后 ハ世尓多ぐい奈き美人 尓ておハし个れバ多 くの

多゛ん里んくハうごう よ      びじん        於本

だ んりんこ うごうはよにたぐいなきびじんにておわしければおおくの


ひと\゛/見奉   り天此 君 尓心  越動 可さゞるハ奈可り个り隠

     ミ多て満つ  このきミ こゝろ うご          可く

ひとび とみたてまつりてこのきみにこころをうごかさざるはなかりけりかく


連させ給 ひ个る時 御遺 言 尓尸   越埋 め須゛し天辻 尓捨 へし

   多満   ときごゆひ个ん 奈き可ら うづ     つじ 春つ

れさせたまいけるときごゆいごんになきがらをうずめず してつじにすつべし


(大意)

第廿二帷子辻

檀林皇后(だんりんこうごう)は世に比類なき美人でいらしたので、多くの

人々はご尊顔を拝するとこの君に心を動かさないものはいなかった。お亡く

なりになるときご遺言に「亡骸は土に埋めず、辻に捨ててください。


(補足)

「世尓多ぐい奈き」、「く」と「い」の一部分がかけています。すぐには読めませんでした。

「美」の下半分がかけています。

「ひと\゛/」、「ひ」と「と」が合体して合字のよう。

「奉り天」(多て満つりて)、振り仮名を読むのも大変。

「動可さゞるハ」、振り仮名「うこ」のしたに変体仮名「可」があるようにもみえますがさて?「さゞる」、「ゝ」に「゛」がありません。ここの本文には他にも「゛」がないところが何箇所かあります。

「隠」の振り仮名が一文字のようにみえますけど、小さな変体仮名「可」があります。

「尸」の振り仮名でも「可」のところが欠けています。どうやらここから右へ「越」と「美」まで虫食いがあるのかもしれません。ちなみに「尸」は「しかばねかんむり」とはしりませんでした。

 

2021年12月3日金曜日

桃山人夜話巻三 その24

P14 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

加多飛ら可゛辻

      つぢ

かたびらが つじ


檀  林 皇  后 の御尊 骸 を捨 し故 尓や

多゛ん里んく王うごう ごそんがい 春て 由へ

だ んりんこ うごうのごそんがいをすてしゆえにや


今 毛折 ふしごとに女  の死可゛い見へ天

いま をり     おん奈 し     

いまもおりふしごとにおんなのしが いみえて


犬 烏  奈どのくらふさ満能見由るとぞ

いぬ可ら春

いぬからすなどのくらうさまのみゆるとぞ


いぶ可しき事 尓奈ん

     こと

いぶかしきことになん


(大意)

かやびらが辻(帷子辻)

檀林皇后の御尊骸を捨てたからだろうか。

今も時折、女の死骸があるようで

犬やからすなどが食らう様子を見ることができるという。

どのようなことなのか気になることである。


(補足)

 帷子辻の画が本文より先になりました。

「か多飛ら」の「か」は最初、平仮名かとおもいましたが、よく見ると変体仮名「加」でした。

振り仮名「多゛ん里んく王うごう」、変体仮名「里」と変体仮名「王」がにています。

「犬烏奈どのくらふさ満能見由るとぞ」、意味がわかってしまうとどうということはないのですが、「くらふさ満能」が何度か繰り返してやっと納得。「と」が合字の「こと」にみえますが、文意から「とぞ」。

「事」の振り仮名「こと」は合字。

 今でも京都太秦に京福電車停留場の駅名に「帷子ノ辻」(かたびらのつじ)があります。

なぜ皇后ともあろうお方がそこに捨てられたのかは本文を。

 

2021年12月2日木曜日

桃山人夜話巻三 その23

P13 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

波 山

者゛さん

ば さん


深  藪 のうちに生  じ

ふ可きやぶ    せ う

ふかきやぶのうちにしょうじ


常 に口 より火を吐 天

つね くち  ひ 者き

つねにくちよりひをはきて


夜ゝ 飛行

よ\/ひ个゛う

よよ ひぎょう


春と楚゛

すとぞ


(大意)

波山

深い藪の中に現れ

常に口より火を吐き

夜ごと飛び回るという


(補足)

「波山」の振り仮名がぼけていてよくわかりません。

鶏といえば伊藤若冲がすぐにおもいうかびますが、この絵の作者は意識したかどうか?

片足をあげて鶏の動きを出す工夫や毛並みなども背中・腹・首周り・尾などそれなりに描きわけています。常に火を吐いているのは実は長い舌かもしれません。とさかが白くて顎までいれると、白い十字架のように見えなくもない。

 

2021年12月1日水曜日

桃山人夜話巻三 その22

P12後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

火越者く登いへども狐  の息 と同 じ橘    子可゛随  筆 尓

ひ        きつ年 いき 於奈 多ち者゛なし  春゛以ひつ

ひをはくといえどもきつねのいきとおなじたちば なしが ず いひつに


者゛さ\/ハ庭 鳥 の大 い奈る尓類 せりと志るせ里

      尓ハとり 於本    る以   

ば さばさはにわとりのおおいなるにるいせりとしるせり


犬 鳳 凰 登いふ毛の阿連登゛もいま多゛慥  奈ら須゛

いぬ本う王う              多し可

いぬほうおうというものあれど もいまだ たしかならず


(大意)

火をはくといっても狐の息と同じようなもので、橘氏の随筆には

「バサバサはにわとりを大きくしたものににている」と記している。

犬鳳凰とも言われているようだが、いまだ確かなことは不明である。


(補足)

「火越者く登いへども」、「ども」が一文字のようでわかりにく。この2行後の「阿連登゛も」では変体仮名「登」(と)に「゛」で「ども」。

「者゛さ\/ハ」、繰り返し記号「く」(縦書き)は2文字以上のとき、1文字では「々」が大まかな約束事。

 大きなにわとりのようなものが、または犬鳳凰と呼ばれるのだから、何がなんだかわからなくなります。特に悪さもしないようだし、まぁ次頁の画を見ることにしましょう。