P15後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
身ハ只 化 しのゝ露 尓さらし天鳥辺野のつ由と消 奈ん
ミ 多ゞあ多゛ つ由 への きゑ
みはただあだ しののつゆにさらしてとりべのつゆときえなん
七 \/日 の奈り行 を恋 尓迷 ふ輩 尓示 し天無常 を
志ち 志゛つ ゆき こひ まど とも可ら 志め むせ う
しちしちじ つのなりゆきをこいにまどうともがらにしめしてむじょうを
歓 じさせつ序 ハ未来 佛 果 の縁 尓ひくへし登天
くハん ついで ミら以ふつくハ ゑん
か んじさせつついではみらいぶっ かのえんにひくべしとて
御 身を野曝 とし給 ひしハ有 可゛多可り个る例 奈里
於んミ のざらし 多満 あり 多めし
おんみをのざらしとしたまいしはありが たかりけるためしなり
(大意)
身はただ、化野(あだしの)の露にさらして、鳥辺野(とりべの)の露と消えたいのです。四十九日までの朽ち果てようを恋に迷う人たちにしめして、人の無常をかんじさせたいのです。そのようにすることはこののち成仏するきっかけともなりましょう」と仰っしゃり、御身を野ざらしになさったのはほとんど例にない行いであった。
(補足)
「鳥」のくずし字が平仮名二文字にもみえますが、「鳥辺野」という地名。
「七\/日」、漢字一文字なので「七ゝ日」ではないとかとおもうのですが。辞書には「七七日」(しちしちにち)とあります。または(なななぬか)。現在では四十九日。
「迷ふ」、振り仮名が「まよ」ではなく「まど」。
振り仮名「とも可ら」、「と」の二画目が左上から始まっているので読み間違えやすい。
「ひくへし」、「く」を読みとばしそう。
「し給ひし」、「し」は変幻自在。
「有可゛多可り个る例奈里」、ここの「有難い」は感謝するの意ではなく、有るのが難しいと文字通りの意味でしょうか。めったにないこと、珍しい出来事、他に例をみない。
檀林皇后は橘(たちばなの)嘉智子(かちこ)(786年〈延暦5年〉- 850年6月17日〈嘉祥3年5月4日〉)、嵯峨天皇の皇后とあります。なんとも昔の人なのでした。しかし死に際しての心意気は現在でもいろあせることなく立派なことであります。
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