2021年12月12日日曜日

桃山人夜話巻三 その34

P19 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

歯黒 遍゛つ多り

者ぐろ

はぐろべ ったり


或 人 古 き社  の前 を通 りしにうつら可奈る女  の伏 拝  ミ居多れ者゛

あるひとふる やしろ まへ とふ         をん奈 ふしお可゛ ゐ    

あるひとふるきやしろのまえをとおりしにうつらかなるおんなのふしおが みいたれば 


戯  連云 て

た王ふ いひ

たわぶれいいて


過 んとせしに彼 女  の振 むきたる顔 を見れ者゛目鼻 奈く口 斗  里大 きくて

春ぎ     可のおん奈 ふり    可本     め者奈  くち者゛可 お本

すぎんとせしにかのおんなのふりむきたるかおをみれば ねはななくくちば かりおおきくて


げら\/と笑 ひし可本二 目と

     王ら    ふ多め

げらげらとわらいしかおふためと


見るべきやう毛

みるべきようも


那し

なし


(大意)

歯黒べったり

ある人が古い社の前を通ったところ、美しい女が伏し拝んでいたので、ふざけて

声をかけて、通り過ぎようとしたのだが、かの女が振り向きその顔を見れば

目鼻がなく口ばかりが大きくて、げらげらと笑う顔はもう一度見たいとは

とてもおもえないものであった。


(補足)

 やっとお歯黒べったりの顔を拝めます。顔だけでなく、着物姿もどこか奇妙です。

振り袖で袖から見える手は若い娘のようですけど、それにしては足は素足でぽっくりではなく薄い草履をはいています。また振り袖なのにお歯黒をして髪は丸髷です。お歯黒の口を拡大して観察するとチト怖い。でもきっといたずらっ子たちはのっぺら部分におかしないたずら書きをして楽しんだはずです。

「通りしにうつら可奈る」、平仮名「に」も出番があるようです。「し」と「ら」がにたようなかたちで前後の流れで読むのでしょう。

「振むきたる」、平仮名「た」も出てきました。その上にはやはり平仮名「に」があります。

 

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