P24後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵
(読み)
この可多多え天可ゝる奇異のこと越ミたる者
きゐ もの
このかたたえてかかるきいのことをみたるもの
奈しといへり平 家の一 門 こゝ尓亡 び多る一 念 の
へいけ いちもん 本ろ いち袮ん
なしといえりへいけのいちもんここにほろびたるいちねんの
残 りしとハいへども婦人 女 子ホ ハ格 別 知 毛り
のこ ふじん尓よしとう 可くべつとも
のこりしとはいえどもふじんにょしとうはかくべつとももり
能登どのホ 尓於 てハこゝ尓出 ること阿るべ可ら須゛歟
のと とう おゐ いづ 可
のとどのとうにおいてはここにいずることなるべからず か
(大意)
このようなことは絶えてなくなり、かってあった奇異の出来事を見た者は
いないという。平家の一門がここで滅び、その一念が
残ったとはいうものの、女子どもらは別として、知盛(とももり)や
能登殿(のとどの)などはここに現れることはないのではなかろうか。
(補足)
知盛(とももり)は平知盛で平清盛の四男、能登殿は平教経(のりつね)で平清盛の弟教盛(のりもり)の子。もう誰が誰だったかなんて忘れてしまっています。
「この可多多え天可ゝる」、変体仮名「可」(か)と変体仮名「多」(た)が二箇所ずつ出てきてますが形が異なっていて悩ましいし、意味もどうもつかみきれないところです。
「こと越ミたる」、「こと」は合字。「ミ」が読みづらい。
「亡び多る」、「多る」が悩みどころ。
「格別」、ここでは、別にしての意。
「能登」、「登」が変体仮名「登」(と)のくずし字とは異なっています。
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