2021年9月7日火曜日

桃山人夜話巻一 その25

P12前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  四鹽 の長 司

多゛以し志本 てうじ

だ いししおのちょうじ


正 應 記 尓加賀の国 小塩 の浦 奈る塩 の長 司 ハいゑ

せう於うき 可ゞ く尓をし本 うら  志本  てうじ 

しょうおうきにかがのくにおしおのうらなるしおのちょうじはいえ


とミて馬 三 百  疋 を持 多り常 尓悪 食 を好  天飼 多る

   う満さんびやくひき もち  つ年 あくじき このミ 可ひ

とみてうまさんびゃくひきをもちたりつねにあくじきをこのみてかいたる


馬 の死し多る肉 をきり味噌塩 ホ 尓漬 置 天食  せり阿

うま し   尓く   ミ曽志本とう つけ於き 志よく

うまのししたりにくをきりみそしおとうにつけおきてしょくせりあ


(大意)

第四塩の長司

「正慶記」にある。加賀の国、小塩の浦に住む塩の長司は、家は

豊かで馬三百疋を持っていた。常に悪食(獣の肉)を好み、飼っている

馬が死ぬとその肉を切り取り味噌・塩などに漬け置いて食べていた。

(補足)

「塩」の旧字体・繁字体「鹽」は虫眼鏡でもよくわかりません。

見出しの「長司」の振り仮名が「てう?じ」となってますが「?」はなんでしょう。本文の「長司」の振り仮名はみな「てうじ」です。

「とミて」、「と」がひんまがりすぎです。

「持」の「寺」くずし字は平仮名の「る」にちかい。

「常」のくずし字は特徴的です。最初の「小」の部分がなくなれば「道」のくずし字に似ています。

「馬の死し多る」、小さい「し」を読みとばしそう。「馬」がたくさん出てきますが楷書に近いものからまったくのくずし字など形がみなことなってます。

「置」のくずし字も特徴的。「罒」(あみがしら)は縦に「ヽ」二つ。「直」は「工」の両脇に「丶」ふたつ。

 

2021年9月6日月曜日

桃山人夜話巻一 その24

P11後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

世法 の妨   を奈春依 天佛経  尓も狐  尓多ぐへて疑心 にた

せ本う さ満多け   よつ ぶつ个う  きつ年     ぎしん

せほうのさまたげをなすよってぶっきょうにもきつねにたぐえてしんにた


とへり只 恐 るべきハ自己の悪 念 奈りこの貪 着  を

   多ゞ於曽    じこ あく袮ん    とんぢやく

とへりただおそるべきはじこのあくねんなりこのとんちゃくを


さらざる時 ハ佛  登いへどもきらい恐 連給 ふと有

    とき 本とけ        於曽 多満  あり

さらざるときはほとけといえどもきらいおそれたまうとあり


世尓恐 路しきこと越こ王いと云 ハ是 より出 多る詞   也

よ 於曽          いふ これ  いで  こと者゛ 

よにおそろしきことをこわいというはこれよりいでたることばなり


(大意)

俗世間の法に妨げをなす。よって仏経の経典にも(狐者異を)狐になぞらえ、疑いの心をもつことにたとえている。「ただ恐ろしのは自分の悪事を行おうとする考えである。この執着を

なくさない限り、いくら佛様でも避けてお恐れなさる」と記してある。

世間で恐ろしいことを「こわい」というのは、ここから出た言葉なのである。

(補足)

「疑」のくずし字を辞書で調べてみると、ここの形の(近いもの)ものはありませんでした。

「たとへり」、平仮名「た」も使われています。

「自己」、「自」のくずし字の筆順がすごい。「旬」に近い書き順です。

「貪着」(とんじゃく)、仏教用語のようで、意味は「頓着」と同じです。「貪」は「貧」に似てますが上部が「今」。

「きらい」がちょっと読みづらい。

「詞」(こと者゛)、振り仮名の「こ」と「と」は両方とも似たような形です。「者゛」は「で」に見えますが、拡大するとかろうじて「む」の下側が流れている形になっています。

 最後の一行は、なんかこじつけっぽいお話であります。この2頁あとに「狐者異」の画がでてきますが、そちらのほうが内容があっておもしろい。

 

2021年9月5日日曜日

桃山人夜話巻一 その23

P11前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  三 狐者異

多゛以さんこハゐ

だ いさんこわい


狐者異ハ我 慢 豪 情 の一 名  尓して世話尓云 無分 別 者 也

こ王ゐ 可゛まんごうぜう いちミやう   せ王 いふむふんべつもの

こわいはがまんごうじょうのいちみょうにしてせわにいうむふんべつものなり


生 てハ法 尓可ゝハら須゛に人 を恐 れ春゛人 の毛のを取 くらひ死して

いき  本お        ひと 於曽   ひと    とり   し

いきてはほうにかかわらず にひとをおそれず ひとのものをとりくらいしして


ハ妄 念 執 着  の思 ひを引 天無量  の可多ちを顕  し仏 法

 もう袮ん志うちやく 於も  ひき むりやう     阿らハ ぶつ本う

はもうねんしゅうちゃくのおもいをひきてむりょうのかたちをあらわしぶっぽう


世法 の妨   を奈春依 天佛経  尓も狐  尓多ぐへて疑心 尓た

せ本う さ満多け   よつ ぶつ个う  きつ年     ぎしん

せほうのさまたげをなすよってぶっきょうにもきつねにたぐえてしんにた


(大意)

第三狐者異

狐者異(こわい)は高慢・強情のもうひとつの名にして、世間に言う無分別者のことである。

生きているうちは法にこだわらず人を恐れず人のものを奪って食い、死んでからは

邪悪な思いに執着して引きずり、様々な姿であらわれ、仏道や

俗世間の法に妨げをなす。よって仏経の経典にも(狐者異を)狐になぞらえ、疑いの心をもつことにたとえている。

(補足)

「狐者異」、見出しの「異」とはことなり、こちらは異体字「己」+「大」。

「我慢」、「我」のくずし字は、あたまの「丶」がなければ変体仮名「奈」とおなじ形。

「分」のくずし字は「彡」+「丶」。

「須゛」「春゛」、使い分けは気分次第。それとも発音がことなったのか?

「無量」、振り仮名が「しやう」にみえますが、「リ」の左側を忘れたか。

「仏法」「佛経」、「仏」の使い分けがあるとおもうのですが、単語の組み合わせかも。

「佛経尓も狐尓多ぐへて疑心尓」、変体仮名「尓」(に)は英小文字筆記体「y」のかたちもあります。

 

2021年9月4日土曜日

桃山人夜話巻一 その22

P10後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

命  越失  ふ奈り故 尓女  の紅粉於しろ以を附 る越

いのち うし奈   ゆへ をん奈 べ尓     つけ

いのちをうしなうなりゆえにおんなのべにおしろいをふけるを


化粧  と云うけせう 登ハ化  粧  ふこと奈り一 休  和尚

けせう          者゛けよ曽本     いつきう おせう

けしょうというけしょうとはば けよそおうことなりいっきゅうおしょう


女  の化粧  春るを見給 ひ天狐  の藻越い多ゞき天

をん奈 かせう    み多満  きつ年 も

おんなのけしょうするをみたまいてきつねのもをいただきて


髑  髏  越冠  美女 尓化  る尓異 奈ら須゛登云  ひ个里

しやれ可うべ 可むりびぢよ 者゛け  こと     の多満 

しゃれこうべをかむりびじょにば けるにことならず とのたまいけり


(大意)

命を失うことになる。故に女が紅や白粉(おしろい)をすることを化粧という。

化粧とは化(ば)け粧(よそお)うことである。一休和尚は

女が化粧をするのをご覧になって「狐が藻を頭にのせて

髑髏(しゃれこうべ)を冠(かぶ)る美女に化けるのと変わらない」と

おっしゃっている。

(補足)

「命」、この頁の中では一番わかりにくというか読めない。難読くずし字。

「故」、ここのくずし字は「古」のかたちが残ってますが、英小文字「m」のようなかたちが多いです。

「紅粉」、「粉」の「分」のくずし字は「彡」+「丶」。

「於しろ以」、「於」のくずし字より、変体仮名「於」(お)のかたちの方がわかりやすい。

「髑髏越」、ここの「越」はほぼ原型が残っています。

「冠」のくずし字も「命」も、くずし字辞典に残念ながらのっていませんでした。

「異奈ら須゛」、異体字「己」+「大」。よく出てきます。

「云」に「の多満」と振り仮名をあてています。

 化粧を「化(ば)け粧(よそお)うこと」に異論はありませんが、何も一休さんをだしてくることはないとおもうし、それに狐が藻云々、髑髏云々なんて言ってないとおもいたい。

飛縁魔(ひのえんま)は男にとりついて何もかも亡ぼしてしまうということですが、「ひのえんま」の音[hinoenma]はそのまま[hinoeuma] →「ひのえうま」、丙午生まれの女のいわれにつながるんでしょうか。はてさて・・・

 

2021年9月3日金曜日

桃山人夜話巻一 その21

P10前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

まどハされ天家 国 越失  ひ身を亡   し多る毛の春く

      いゑく尓 うし奈 ミ ホろ本゛ 

まどわされていえくにをうしないみをほろぼ したるものすく


奈可し須゛毛路こし夏の桀 王 の妹 嬉殷 の紂  王 の

         可 个つ王う ま以きゐん ちう わう

なかしず もろこしかのけつおうのまいきいんのちゅうおうの


妲  己周  の幽 王 の褒 娰ホ 皆 飛縁 魔奈り去 者゛

多゛つき志う  ゆうわう 本うじとうミ奈ひゑんま  され

だ つきしゅうのゆうおうのほうじとうみなひえんまなりされば


飛縁 魔尓見入 らるゝ者 ハ身 帯  ハいふもさら尓して身の

ひゑんま ミいれ   もの 志ん多゛以         ミ

ひえんまにみいれらるるものはしんだ いはいうもさらにしてみの


腎  精 浄 血 迄 も吸 とら連て遂 尓これ可゛多免尓

志゛んせいせい个つまで 春い    つゐ  

じ んせいせいけつまでもすいたられてついにこれが ために

(大意)

惑わされて家や国を失い身を亡ぼすものは

少なくない。唐土の国、夏の桀王の妹嬉(まいき)、殷の紂王の

妲己(だつき)、周の幽王の褒娰(ほうじ)などみな飛縁魔である。だから

飛縁魔にみいられたものは身代は言うに及ばず、からだの

精力や生き血までも吸いとられてしまい、この女ために

(補足)

「家国越」、漢字だけ読むと「家出」とみえてしまいます。「国」のくずし字はいくつかありますがここのは「出」ににています。

「毛の」、「毛路こし」、変体仮名「毛」(も)はなれても読みづらい。

「見入らるゝ者ハ」、「ら」の次が変体仮名「里」(り)にもみえますが、それでは文章がつながりません。

「いふもさら尓して」、「ら」がわかりにくいですが、文章のながれから「ら」。

飛縁魔の例として夏・殷・周の妃たちをあげていますが、はたして読んですぐにそうだそうだとうなずく人はどれくらいいたことかと、自分の無学を慰めます。

 

2021年9月2日木曜日

桃山人夜話巻一 その20

p9後半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

惑 ひ溺  る遍゛可ら須゛との教  奈り女  の性  ハ皆 ひ可゛めり

まど お本゛         をしへ  をん奈 せう  ミ奈

まどいおぼ るべ からず とのおしえなりおんなのしょうはみなひが めり


只 迷  越阿るじ登し天彼れ尓随   ふ時 や佐しくもおもし

多ゞまよひ       可  志多可゛ とき 

ただまよいをあるじとしてかれにしたが うときやさしくもおもし


路くも覚  ふべきこと奈りさ阿連バ是 尓心  越とら可し

   お本゛           これ こゝろ

ろくもおぼ うべきことなりさあればこれにこころをとらかし


(大意)

惑わされて溺れることのないようにとの教えである。女の性質とはみな素直でなくねじけているものなのだ。(心を奪われた)女にひたすら迷い、(気持ちのままに)それに従うときは、女のことを優美にも心惹かれるとも感じることだろう。そうであるからこれに心をとらわれ、

(補足)

「遍゛可ら須゛」、よくでてくるので、まとめてセットでおぼえます。

「教」(をしへ)、振り仮名を読むのもちょっと大変。

「女の性(せう)は皆ひ可゛めり」、辞書を引くと〈徒然草•107〉にあるそうです。そのまま引用しています。

「随ふ」(志多可゛う)、くずし字も原型が残っているので読めないこともありませんが、振り仮名があるので悩みません。よくでてくるの覚えます。

「や佐しくも」、文章のながれで読むことはできますが、変体仮名「佐」(さ)がすぐにはわからない。次の変体仮名「路」(ろ)はもうおなじみです。

「こと」は合字。

 徒然草の時代からずっと好き勝手なことを言い続けているということは、その本人がその原因を改められない「愚かな」ことの証明であります。

 

2021年9月1日水曜日

桃山人夜話巻一 その19

P9前半 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

(読み)

第  二飛縁 魔

多゛い尓ひゑんま

だ いにひえんま


飛縁 魔ハもと佛 説 与り出 多る奈尓し天女 犯 を戒   多る奈り

ひゑんま   ぶつせつ  いで  奈   尓よ本ん いましめ

ひえんまはもとぶっせつよりいでたるなにしてにょぼんをいましめたるなり


人 の女  尓迷 ひ天身を亡   し家 越失  ふ越さとさしむ飛縁 魔

ひと をん奈 まよ  ミ 本ろ本゛ いゑ うし奈       ひゑんま

ひとのおんなにまよいてみをほろぼ しいえをうしなうをさとさしむひえんま

                               おやま


縁 障 女  登も訓 春゛又 外面 似菩薩 内 心 如 夜叉  とも

ゑんせう尓よ   くん  ま多げめんぎ本さつ奈い志ん尓よやしや

えんしょうにょともくんず またげめんぎぼさつないしんにょやしゃ とも

可くれめ


説 天顔 と心  とハ格 別 尓し天恐 路しきハ女 人 奈連者゛

とき 可本 こゝろ  可くべつ   お曽    尓よ尓ん 

ときてかおとこころとはかくべつにしておそろしきはにょにんなれば


(大意)

第二飛縁魔

飛縁魔とはもと仏説より出た名で、女犯(にょぼん)を戒めた言葉である。

人が女に迷って身を滅ぼし、家を失う(ことの愚かさ)を諭している。飛縁魔

縁障女(ひえんまえんしょうにょ)ともいう。また「外面似菩薩内心如夜叉(げめんぎぼさつないしんにょやしゃ)」(おやまかくれめ)とも説いて、顔と心とがまったく異なっていて恐ろしいのが女であるのだから

(補足)

 現代の男性諸氏年令を問わずに耳のとても痛い、教えを説いてくださっております。しかし、説かれてもすでに時遅しという方々もたくさんおられるはず。それでもありがたく耳を傾けるべし。

「外面似菩薩内心如夜叉(げめんぎぼさつないしんにょやしゃ)」、漢字をそのまま読めばよいだけです。外面は菩薩に似て、内の心は夜叉の如し。本当にその通りでしょう。

「出多る奈尓し天」、変体仮名「多」と「し」を読み飛ばしてしまいそうです。

「人の女尓迷ひ天」、よその女に惚れてしまうという浮気を言っているのではありません。

「し」がひとつ上の文字に重ねてある書き方が(振り仮名でも)目立ちます。

「可くれめ」、「く」が判別しにくいですが、「訓春゛」(くんず)の振り仮名「く」と同じ形です。「く」の下側が、斜め右下にではなく水平に平らです。

「顔」のくずし字の偏「彦」はさすがに簡略にくずせません。普通は偏の部分は適当になのですが。

「格別」、それぞれが別であること。「木」偏をとって各別。次の変体仮名「路」(ろ)の旁「各」のくずし字が同じ形です。

「恐路しきハ」、「し」と「き」の一画目がつながって「し多さ」にもみえてしまう。「恐」のくずし字は「心」の上が「|」プラス「口」のような形。「思」は「ツ」。