2020年12月31日木曜日

豆本 禰この道行 その7

P4拡大後半

P4P5見開き

(読み)

ておこ満のいろ可尓こゝろを可けをり

ておこまのいろかにこころをかけおり


\/きてハくど起个連どもこ満ハ

おりきてはくどきけれどもこまは


とら蔵 尓ミさ本を多てゝきゝ■

とらぞうにみさおをたててきき


(大意)

おコマの色香に心を奪われ、折々

来ては口説くのですが、コマは

トラ蔵に操(みさお)をたて聞き(入れず)


(補足)

 ここのたった3行、ちょっと手強かった。

ひとつは「ろ」「可」「う」の区別。もうひとつは「ゝ」の読み。「こゝろ」「多てゝきゝ」

何度も読んで意味が通じる読みを探しました。

 屋外の木の陰からのぞいているのはごろつきのクマ。その視線の先は一直線におコマの腰から太ももにながれる色香がタップリただようあたりにそそがれています。それにしてもおコマのトラ蔵にしなだれる姿は色っぽい。

 木の幹を描くのがあまり得意ではなさそうです。

 

2020年12月30日水曜日

豆本 禰この道行 その6

P.4前半

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(読み)

五さんとあるよふ多り王可゛やを

 さんとあるよふたりわが やを


ぬけいでゝねぎしのさと尓ゆき奈

ぬけいでてねぎしのさとにゆきな


可ちを可りて春ミゐ多りきんじよ

かちをかりてすみいたりきんじょ


のごろつき尓くまといふものあり

のごろつきにくまというものあり


(大意)

(暮ら)そうとある夜ふたりは我が家を

抜け出て根岸の里へ行き、中地(なかち?)

を借りて住むようになりました。近所の

ごろつきにクマというものがいて、


(補足)

「王可゛や」、変体仮名「王」(わ)は「已」のようなかたち。

「ねぎしのさと尓ゆき奈可ちを可りて」、「奈可ち」が間違いかもしれません。「ゆき奈」が違うよみで、「可ち」は「うち」(家)としても意味は通じるので、ウ~ン、悩みます。

 二匹いやふたりのなんとも幸せそうな表情、とくにおコマ。飼い猫がいつもこんな表情なら飼い主さんはメロメロでしょうね。そしてトラ蔵の渋みのある優しくおコマを見つめる目。色男全開であります。

 ふたりの衣裳も細かいけど、障子の腰板の板目の描き方もこだわってます。他の部分も実に念入り。

 

2020年12月29日火曜日

豆本 禰この道行 その5

P2後半

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(読み)

ふ多り可゛いふやう可ら

ふたりが いうようから


していつまでゐてもふうふ尓奈る

していつまでいてもふうふになる


ことハできぬ可ら可けおちして

ことはできぬからかけおちして


ふ多りいつしよ尓くら五

ふたりいっしょにくら


(大意)

ふたりのやりとりから

いつまでこうしていても夫婦になる

ことはできないだろうから、駆け落ちして

ふたり一緒に暮らし


(補足)

「あ」と「お」の区別は簡単です。「お」の形が基本でそれから「丶」をとったのが「あ」となります。

「いふやう可ら」、「う」「可」「ら」どれも似ています。

「こと」は合字で一文字扱いです。「ゟ」(より)はフォントがあるのですが「こと」はありませんでした。

P2P3見開き

 とら蔵の左奥背景に木々の間から瓦屋根の家々が細かく描かれています。ここだけではありませんが描けるところはとにかく描いてやるという画工の意地みたいのがありそう。親方に弟子がこんなもんでどうでしょうと見せると、まだここが描けるじゃねぇかとダメ押しされていそうです。

 このBlogで以前に「猫のはなし」を取り上げています。

この頁を参考にして描いているのがわかりますし、猫の名前も同じです。出版は「禰この道行」が明治15年、「猫のはなし」が明治18年です。


 

2020年12月28日月曜日

豆本 禰この道行 その4

P2前半

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(読み)

▲奈しふ可起奈可とぞ奈り尓个りあ

 なしふかきなかとぞなりにけりあ


まり志げく尓奈れバふ多りともと本゛

まりしげくになればふたりともとぼ


でもできぬやう尓奈り多るをやう\/

でもできぬようになりたるをようよう


志のびあひて

しのびあいて


(大意)

(出会いを)して深き仲になっていました。

あまりに何度も会っていると二人とも??

でもできぬようになってしまうところをなんとか

忍び会って


(補足)

「あまり志げく尓奈れバふ多りともと本゛でもできぬやう尓奈り多るを」、「と本゛」が不明です。想像力を働かせるのですが、ウ~ン・・・、どなたか教えてほしいです。あとでわかったら加筆します。まぁ意味は「二人とも頻繁に会っていると飼い主から制限されて会えなくなってしまうところをなんとか忍びあって」のような感じでしょう。

「奈しふ可起奈可とぞ」、「し」も「可」もとても小さい。しかし文章のながれから読めます。

「まり志げく尓」、「やう\/」、最初のは大きい「し」、あとのは繰り返し記号です。見た目はまったく同じ。

 手ぬぐいを口にくわえているのはコマ、明かりをさしだしているのがお豊。絵はやや煩雑に感じるほど描き込まれています。コマの手足はちゃんと猫になっています。


 

2020年12月27日日曜日

豆本 禰この道行 その3

P.1



P1拡大

(読み)

あるしんミち尓おとよといふ可こひもの

あるしんみちにおとよというかこいもの


尓可ハ連多るこ満といふめねこあり

にかわれたるコマというめねこあり


お奈じ志んミち尓ねこ八 といふ个゛い

おなじしんみちにねこはちというげ い


しや尓可ハ連てとら蔵 といふをねこ

しゃにかわれてとらぞうというをねこ


ありいつ可の起づ多ひ尓であひを▲

ありいつかのきづたいにであいを


(大意)

ある新道にお豊という囲い者(お妾さん)に

飼われているコマという雌猫がいました。

同じ新道にねこ八という芸者

に飼われているトラ蔵という雄猫

がいました。いつしか木づたいに出会いを


(補足)

 絵の描きこみがすごい。1ページ目だから気張ったのかとおもうとそうでもなくこのあとのページも細かいのです。主役の猫二匹と芸者ねこ八の顔だけが無地で目立たせています。

屋根にいるのがコマ、抱かれているのがトラ蔵で尾っぽが短い。二匹ともニコニコしてニャァァァンっと声がきこえそう。ちょうちょ結びの首輪もかわいい。それに栄養状態がよくぷくぷく。

「新道」、小路。町家などの間の細い道。

「ミち尓」、「可こひもの尓」、おなじ変体仮名「尓」でも形が異なります。前者は平仮名「ふ」のよう、もう一方は英文字筆記体の「y」ににています。

「可ハ連」、変体仮名「連」(れ)、なんとなくもとの「連」の形が残っています。二行後にも出てきます。

「こ満」、変体仮名「満」(ま)。「満」とは似てもにつきません。

「志んミち」、一行目は平仮名「し」でしたが、ここでは変体仮名「志」。

「个゛いしや」、変体仮名「个」(け)。文末で頻繁に「〜し个る」(〜でした)のように使われます。

「とら蔵」、この「蔵」のくずし字を書いてみろと言われてもなかなか難しい。「〜蔵」のように代表的な名前で頻繁に使われますので読み違いはないでしょう。

「いつ可の起づ多ひ尓」、「いつ可の」は「いつしか」がぴったりそうです。「起づ多ひ」がよくわかりませんでしたが、猫同士なので木に登って枝をつたって出会いをというふうに想像しました。まったく違っているかもしれません。


 

2020年12月26日土曜日

豆本 禰この道行 その2



見返し

(読み)

吉文 本

よしぶん ほん

(大意)

(補足)

 提灯の「吉文」はこの豆本の編輯兼出版人「木村文三郎」こと吉田屋文三郎のことでしょうか。

 渋黄色一色をつかい所々に色を付けています。猫型の手焙火鉢のような煙草の火付けにつかうものなのか、なかなかおしゃれな一品。縦線が両脇にいくに従って間隔が狭まり丸みと立体感を与えています。今でもこの作りで花挿やゴミ箱などで販売すれば売れそうです。台の側面を今度は横線で柾目板の感じを出しています。背景の風景はやや荒っぽく銅版画の特徴をわざと出さないようみえます。

 

2020年12月25日金曜日

豆本 禰この道行 その1

表紙

(読み)

禰この道 行

ねこのミち由き


(大意)

ねこのみちゆき


(補足)

 前回と同じ出版人で同じ日付で御届となっています。なので表紙の雰囲気も似ています。

 三味線をかかえ右手にバチをもつのが芸者のねこ八、その隣は「おとよといふ可こひもの」でしょうか。まわりの沈んだ暗さのなかで顔の白さが引き立ちます。

やはり銅版画なので随所にその細かさが発揮されています。

「ね」の変体仮名は「年」、「根」、「禰」などがあります。このうち平仮名「ね」になったのは一番複雑な「禰」のようです。