2020年12月27日日曜日

豆本 禰この道行 その3

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(読み)

あるしんミち尓おとよといふ可こひもの

あるしんみちにおとよというかこいもの


尓可ハ連多るこ満といふめねこあり

にかわれたるコマというめねこあり


お奈じ志んミち尓ねこ八 といふ个゛い

おなじしんみちにねこはちというげ い


しや尓可ハ連てとら蔵 といふをねこ

しゃにかわれてとらぞうというをねこ


ありいつ可の起づ多ひ尓であひを▲

ありいつかのきづたいにであいを


(大意)

ある新道にお豊という囲い者(お妾さん)に

飼われているコマという雌猫がいました。

同じ新道にねこ八という芸者

に飼われているトラ蔵という雄猫

がいました。いつしか木づたいに出会いを


(補足)

 絵の描きこみがすごい。1ページ目だから気張ったのかとおもうとそうでもなくこのあとのページも細かいのです。主役の猫二匹と芸者ねこ八の顔だけが無地で目立たせています。

屋根にいるのがコマ、抱かれているのがトラ蔵で尾っぽが短い。二匹ともニコニコしてニャァァァンっと声がきこえそう。ちょうちょ結びの首輪もかわいい。それに栄養状態がよくぷくぷく。

「新道」、小路。町家などの間の細い道。

「ミち尓」、「可こひもの尓」、おなじ変体仮名「尓」でも形が異なります。前者は平仮名「ふ」のよう、もう一方は英文字筆記体の「y」ににています。

「可ハ連」、変体仮名「連」(れ)、なんとなくもとの「連」の形が残っています。二行後にも出てきます。

「こ満」、変体仮名「満」(ま)。「満」とは似てもにつきません。

「志んミち」、一行目は平仮名「し」でしたが、ここでは変体仮名「志」。

「个゛いしや」、変体仮名「个」(け)。文末で頻繁に「〜し个る」(〜でした)のように使われます。

「とら蔵」、この「蔵」のくずし字を書いてみろと言われてもなかなか難しい。「〜蔵」のように代表的な名前で頻繁に使われますので読み違いはないでしょう。

「いつ可の起づ多ひ尓」、「いつ可の」は「いつしか」がぴったりそうです。「起づ多ひ」がよくわかりませんでしたが、猫同士なので木に登って枝をつたって出会いをというふうに想像しました。まったく違っているかもしれません。


 

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