2020年12月7日月曜日

豆本 猿加尓合戦 その5

P.2前半

(読み)

多年を王可゛やへもち可へり尓ハへ

たねをわが やへもちかえりにわへ


うへ多連バめを多゛し多ちまち

うえたればめをだ したちまち


多い本゛くと奈りミことの可起

たいぼ くとなちみごとのかき


多くさん尓奈り多れバきの

たくさんになりたればきの


もとへ由起多のしミゐ多れども

もとへゆきたのしみいたれども


(大意)

種を我が家へ持ち帰って庭へ

植えたところ芽をだしたちまち

大木となり見事な柿が

たくさん実りました。(蟹は)木の

下(もと)へ行って(眺めて)楽しんでいましたが、


(補足)

「王可゛やへ」、変体仮名「王」(わ)は漢字「已」のかたち。

「尓ハへ」、庭(にわ)をこのように書かれると庭のイメージがわきません。

「多連バ」、変体仮名「連」(れ)ですが、この2行あとは「多れバ」と平仮名「れ」になってます。さらにその次の行「多れども」でも平仮名「れ」です。

「ミこと」、フォントがないので「こと」としましたが、一文字で合字です。「こ」の下部と「と」の一画目がつながります。濁点がついていませんけんど「みごと」の意。

「多のしミゐ多れども」、「し」が3行前の「し」に比べるととても小さい。「ゐ」が最初わかりませんでした。わからないときはひとまずとばして次に進みます。すぐ次の行に「ゐ多る」がありました。「ゐ」のようだとわかりそれで意味も通じます。

 銅版画になり、木版と比べると細密画のように筆記具の先の細さに応じてどこまでも描きこむことができるようになりました。そうなると画工は力一杯できることは限度まで挑戦してしまいます。木版画のときの奥ゆかしさというか何から何まで描き込まないという趣がなくなってしまいました。

 この絵も画工は隙間なくペンをはしらせています。細い線だけで木に登り柿をもいでいる腕や脚の力の入れ具合が上手です。どの柿にもヘタと反対側のところに「ツ」のような模様がはいっています。

 

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