2020年4月30日木曜日

豆本 きつねの嫁入 その12




 P.10

(読み)
たまのよふなるなんし
たまのようなるだんし

多んじやう阿り
たんじょうあり

於やこともむしけ
おやこともむしけ

ちにミちのうれ
ちのみちのうれ

いなく春こ
いなくすこ

やか尓ひたち
やかにひだち

个る由へそのよろこび?ふ
けるゆえそのよろこび?う

か多なら春゛一 家しんるいさ可い
かたならず いっかしんるいさかい

个るこそめで多しゝゝ
けるこそめでたしめでたしめでたし



(大意)
玉のような男子が誕生しました。
親子ともに(赤ちゃんには)虫家や
(母親には)血の道の心配はなく
健やかに(産後の)肥立ちも心配はありませんでしたので
その喜びようは大変なものでありました。
一家親類栄えることこそ、めでたしめでたしめでたし



(補足)
 最後のページはめでたしめでたしめでたしで終わるのがお決まりですが、
ここはなんと読むのだろうとちっともめでたくはありません。

一行目のふたつの「な」は現在とほとんど同じ。「なんし」と読めても意味が不明ですが、読み進めると「男子」だろうとわかります。4行目の「な」も現在と同じ。

「たまのよふなる」では平仮名「た」ですが、その左側では変体仮名「多」です。
そして「多んじやう」の次が「た」にも「な」にも見えますが「阿」(あ)でした。

「おやことも」の出だしも悩みます。変体仮名「於」のようにみえます。

「むしけ」(虫家)、「む」がこれまた悩む。

「そのよろこび?ふか多なら春゛」、ここが一番悩みました。
「か多なら春゛」は「一方(ひとかた)ならず」の「一」が省略されていると荒っぽく判断すれば意味は通じます。そうすると「?」は「や」としたいのですが、そうは読めません。
変体仮名「个」にも似てますが、この豆本で出てきた「个」はたいてい「个る」の例が多く、また字体も小さい。うーん、わかりませんでした。

「一家」(いっか)、これは漢字。平仮名ばかりで悩んでいるところへいきなり漢字が出てくるとこれまた一瞬悩むんです。

「しんるい」、「るい」が「ゑ」に見えてしまいます。
「さ可い个る」、「さ」の一画目「一」が弱いので「と」のようにも見えてしまう。
「めで多し」、「め」の一画目の逆「ノ」があるかないかですが、最後のお約束言葉なので「め」。


 新婚さんホヤホヤだからでしょうか、お玉さんは振り袖です。
表は渋い青で落ち着きさを、でも内側は赤と黄色で若さをと粋ですね。





2020年4月29日水曜日

豆本 きつねの嫁入 その11




 P.9

(読み)
里やうしん
りょうしん

うひまごの
ういまごの

か本ミること
かおみること

をたのしミ
をたのしみ

し尓者や
しにはや

りん个゛つ
りんげ つ 

となり
となり

志ゆひ
しゅび

よく
よく



(大意)
両親は初孫(ういまご)の顔を見ることを
楽しみにしていたところ、
早くも臨月となり、首尾よく



(補足)
「里やうしん」、この「里」は以前にも出てきました。
「か本ミること」(かお)、いつもなら「か」は例外なく「可」なのですが。「こ」の真ん中に
「丶」があって「ミ」に見えますが、その上の「ミ」を見ると、「そ」のようにつながってます。
「者や」(はや)、「は」が小さいのでちょっと悩みます。
「志ゆひよく」、その前の「りん个゛つとなり」につながり「なり志ゆひ」(なりしゆへ)のように読んでしまいそうです。

 文章全体の筆跡は今までと特に変わることはないのですが、めでたい婚礼の席のせいか、女性が書いたような感じの手跡です。



P8P9見開き。



 絵全体の色合いがやさしく渋くもありほんのりと明るくもありめでたい席にぴったりです。
屏風で丸く囲って、四角が基本の和室の対比でおしゃれです。

松の盆栽もその台の脚が凝ってます。

白無垢姿のお玉さん、おもいかなって三三九度の盃が・・・。よかったよかった。
白無垢なので白一色、描きにくいとおもうのですが輪郭線を水色で際立たせています。



2020年4月28日火曜日

豆本 きつねの嫁入 その10




 P.8

(読み)
者やの??
はやの??

のいわ多 又
のいわた

又 ?び?春
  おび?す

きた
きた

れバ
れば


(大意)
早くも(望みの)岩田帯を
巻く頃となり


(補足)
一行目、見た目どおりは「者やのつこく」ですが、「のつこく」が、資料によれば「のそみ」と読めるのだそうです。いろいろ調べてみてもわかりません。お手上げであります。降参。

「いわ多」、いままでは「わ」は変体仮名「王」でしたが、この「わ」は「和」のようです。

「又」は記号「☓」の上に「一」です。

「於び」(おび)、くずし字辞書で「於」を調べても、あまり似てません。
この直後の「山」に見える字が「も」なのだそうですが、「も」のいろいろな変体仮名を調べ尽くしても「山」のようなものはありませんでした。

 たった4,5行に手も足もでません。

読めなかったときは、わかるところだけをつないでいって、あとは類推するしかありません。


2020年4月27日月曜日

豆本 きつねの嫁入 その9




 P.7

(読み)
おたまハ
おたまは

そう者らめ
そうはらめ

ミとなりし
みとなりし

由い里やう
ゆいりょう

しんハ
しんは

さらなり
さらなり

可ないのものも
かないのものも

おふき尓よろ
おうきによろ

こびふうふの
こびふうふの

中 もむつましく
なかもむつまじく



(大意)
お玉はすぐに身ごもりましたので
両親はもとより家内の者たちも
大変に喜びました。
夫婦の仲も睦まじいものでありました。



(補足)
 一行目はとても読みやすくこのままスラスラすすめるかとおもいきや、なかなかやっかいです。

「そう者らめ」、読めませんでした。「そ」と変体仮名「者」(は)がほとんど同じ形です。「そ」の一画目の逆「く」の部分が左に傾いていてわかりずらい。「た」に見えます。

「由い」、(ゆへ)ですが、「ゆい」ともいうのでしょうか、わかりません。
「里やうしん」、「里」が読めませんでした。
「可ないのものも」、二番目の「の」がすぐ左側の「よ」とほとんど同じ形です。
「おふき尓」、この「尓」は筆記体の「y」。
「むつましく」、「む」が難。

 先頭の提灯の家紋がどこかでみたようなと前をたどってみると、表紙の錦絵の男の右胸にある白い紋所と同じようです。宝珠の紋でしょうか?


P6P7見開き



 見開きで眺めると一層華やかです。
婚礼輿入れの慶事にケチをつけてはひんしゅくですが、
雨がちょっと降りすぎかなぁ・・・
これじゃぁきつねの嫁入りじゃなくなっちゃいます。

 籠横にお供をする女性の着物姿、腰から下をゆるい「く」の字に描いています。
和服着物姿の女性を描くときの定石でしょう。



2020年4月26日日曜日

豆本 きつねの嫁入 その8




 P.6

(読み)
さんゝ
さんさん

くど尓
くどに

さ可つき
さかつき

ことも
ことも

すミ
すみ

なこふ
なこう

どハよひの
どはよいの

うちと者や
うちとはや

おひらきと
おひらきと

なり尓个る
なりにける



(大意)
三三九度に盃事も済み、
仲人は宵の内にと早くも
お開きとなりました。


(補足)
 まさにきつねの嫁入り、
質素ながらも青畳のような蓬色の品のある籠にお供の者たちのなんと幸せそうな顔かおカオ・・・

 天気雨や、晴れの中にさぁ〜っと通りすぎるような雨を「きつねの嫁入り」と呼びますが、この雨の描き方もいいですねぇ。

 浮世絵には雨の情景を描いた名作がたくさんありますが、この豆本の雨もいけてます。
雨を描くなんて、その表現描写に恐れ入ります。
青と黒で降り落ちる軌跡を並行にしないところがミソかな。
ちょっと降りすぎているような気がしないでもないけど。

 前頁の終わりの文章は「さんゝ」でしたが、この頁ではその「さんゝ」をもう一度繰り返しています。慶事の婚姻なので「さんゝ」と「九度」を離してしまっては、縁起でもないので再度繰り返しているのでしょう。


「くど尓」、「と」と「尓」がつながっています。
「ことも」、この「こと」は合字になっていて、これで一文字扱い。


2020年4月25日土曜日

豆本 きつねの嫁入 その7




 P.5

(読み)
由いのふ
ゆいのう

おとり 可ハし
おとり かわし

大 吉 日 を
だいきちじつを

ゑらひ
えらひ

古しいれ
こしいれ

ありてさんゝ
ありてさんさん


(大意)
結納を取り交わし、
大吉日を選んで輿入れをしました。
三々(九度)


(補足)
「おとり可ハし」、「と」の一画目の右側に「丶」があり、そのために「ハ」に見えてしまいました。「可」が「め」に見えて、読めません。

「古しいれ」、久しぶりに変体仮名「古」、悩みます。

 白兵衛とお供の者も正装です。
お供の肩に掛けているものは、婚礼祝定番の鰹節でしょうか。


 P4P5見開き。



 障子の赤い部分は堅桟(たてさん)下桟(しもさん)中桟(なかさん)の名称があるようですが、ここはきっと赤漆でしょう。黄色い部分は腰板(こしいた)、部材はなんでしょう?

 特に派手なこともないお祝いの訪いの光景ですが、隅々まで丁寧に描きこまれています。


2020年4月24日金曜日

豆本 きつねの嫁入 その6




 P.4

(読み)
志可らハ
しからば

さつそく
さっそく

たまゑも
たまえも

んの可多へ
んおかたへ

こんいん
こんいん

のそうだん
のそうだん

せんと☓
せんと


☓ひと
 ひと

もつて
もって

いゝいれ
いいいれ

し尓さつ
しにさっ

そくそう
そくそう

だんとゝの
だんととの

い吉 日 を
いきちじつを

いらミて
いらみて

そう者う
そうほう


(大意)
ならばと早速に、玉右衛門方へ婚姻の相談を
人を介して行いましたところ、すぐに相談が整い
吉日を選んで双方


(補足)
 特に込み入ったお話ではないのですが、字面ばかりに注意を向けていると、
それに登場人物?が狐ばかりで、顔が皆同じで区別がつきません。
その上、衣装も上等で皆似ています。

 尻尾玉右衛門には息子に白太郎がいます。
また、白狐屋白兵衛には16になる娘お玉がいます。
このお玉があるとき白太郎を見初めます。
白兵衛は娘お玉の気持ちを察し、人を介して玉右衛門宅に婚姻の相談を遣わせます。
というのが、ここまでの内容になります。


「志可らハ」、「ハ」は問題なくわかりますが、「可」が通常より大きくて「ら」とのつながりがわかりずらく、「ら」もとらえにく。

「んの可多へ」、「可多へ」の区切りが悩みます。変体仮名「多」は「さ」の横棒を除いた形ですが、左にカーブしているところが左下に傾いてしまって、パッと見た目は「くく」です。

「いゝいれ」、(つゝいれ)ではありません。
「いらミて」、(えらみて)。「えらむ」は「選みて」。


 白兵衛の使者を迎えているのは玉右衛門、婚礼のことなので羽織袴姿で上機嫌です。
上がり框とその部屋への壁の板や障子の桟には黒線で立体感を出しています。