2020年5月7日木曜日

豆本 狐の嫁入 その6




 P.4

(読み)
[つゝき]

さう本う
そうほう

のおや多ちハ○
のおやたちは

○こん春け
  こんすけ

さう多ん◎
そうだん

◎奈し个
 なしけ

連バ志
ればしゅ

びよく
びよく

とゝのひ
ととのい

きち日 を
きちじつを

えらび
えらび

由ひのう
ゆいのう

をとり
をとり

可ハし
かわし

はんし
ばんじ

とゝのひ※
ととのい


(大意)
双方の親たちは(野田屋)狐助さんに相談をしましたところ
首尾よくまとまり、吉日を選んで結納を取り交わし万事
相整いました。



(補足)
「个連バ」(ければ)、どの頁にもよく出てきます。話の前後をつないでいく接続詞のように使われます。

旧仮名使いが数箇所あります。
「さう本う」(そうほう)、「さう多ん」(そうだん)、「志びよく」(しゅびよく)、
「とゝのひ」(ととのい)、「由ひのう」(ゆいのう)。

 お金持ちの玄関、造りが質素で飾り物が一切ありませんが、床は檜でピカピカに磨き上げられ、後ろの板戸の黒い部分は漆塗り、上り口の壁の部分は玉石貼りです。




2020年5月6日水曜日

豆本 狐の嫁入 その5




 P.3

(読み)
可起や
かきや

とくへもん
とくえもん

可゛む春
が むす

め尓て
めにて

べつ
べっ

ひん
ぴん

由へ
ゆえ

さう
そう

本う
ほう

とも
とも

尓き
にき

尓いり
にいり

[次へ]


(大意)
柿屋徳右衛門の娘で
別嬪(べっぴん)でありましたので
双方ともに気に入り


(補足)
「尓」(に)が3箇所あります。ほとんど筆記体の「y」のもあります。

P2P3見開き。



 角火鉢の右隅が色のせ忘れ、他の細かいところにこのようなミスはないのにです。
やかんは鉄でしょうから普通は南部鉄瓶みたいな黒にするところを渋黄色にしています。赤の使用を意識的に少なくしているようにも感じます。
洒落てます。

火鉢の木の柄が黒柿の模様に似てます。そうだったとしたらとても上等な代物です。

燗付けのお銚子を運ぶ御婦人の姿勢、定石通り膝を少し曲げてくの字にしてます。

 忍藩下級武士であった尾崎石城が文久元年から178日間にわたり日常生活をありのままに絵日記風に記した「石城日記」というものがあります。国会図書館デジタルアーカイブで全文読めます。

 この日記に出てくるご婦人たちの家での様子や振る舞いが細かに描かれているのですが、そのご婦人たちは着物の裾を皆さん引きずっているのです。

 ちょうどお銚子を持ってくる狐の御婦人みたいなのです。
幕末だけでなく武士階級などの家庭では女性は着物の裾を引きずるくらいにしていたのでしょうか。

 屏風の絵も気になりますねぇ。
小さな山の頂上は緑におおわれていて、特に意味のない風景かな。
よくわかりません。



2020年5月5日火曜日

豆本 狐の嫁入 その4




 P.2

(読み)
[つゝき]

尓あひとこの
にあいとこの

本可奈るび奈ん
ほかなるびなん

尓ぞ奈り个る
にぞなりける

この日の多゛やこん
このひのだ やこん

春けき多り
すけきたり

多満二郎 可゛
たまじろうが

个んふくを志由くし
げんぷくをしゆくし

ついて尓よめこをおせ
ついでによめこをおせ

ハせんと者つむ満
わせんとはつむま

のい奈りまつりを
のいなりまつりを

さい王い尓玉 二郎 を
さいわいにたまじろうを

つ連由起个るむ春めハ
つれゆきけるむすめは


(大意)
(元服した姿は)誰が見てもこれ以上ないくらいに
美男(びなん)となっていました。
この日、野田屋狐助(のだやこんすけ)が来ました。
玉二郎が元服をしたことですし、ついでに嫁さんをお世話しましょうと
初午(はつむま)の稲荷祭(いなりまつり)を幸いに
玉二郎を連れて行きました。


(補足)
前頁の最後の文章には続きを表す記号「X」がありますが、この頁の先頭は「つゝき」となってます。

「この日」の後に続く「の多゛やこん春け」がしばらく理解できませんでした。
読みに間違いがないはずと、前後を読み比べ、「き多り」が「来たり」だろうとわかると、不明の部分は人の名前とやっと納得。初心者は辛い。

次にもっとわからなかったのがここ、「者つむ満のい奈りまつり」。
基礎的な語彙が不足しているのが理由とあとで思い至りました。
「い奈りまつり」はそのままで「稲荷祭」。
「者つむ満」が悩んだ。「者つ」と「む満」に分かれるだろうと気づくのにこれまた時間がかかりました。そういえば「む満」は「馬」や「午」のことだったと思い出せば、あっそうか「初午」だとわかった次第。恥ずかしく情けぬ。

 で、ググってみると、芭蕉の俳句にこんなのがありました。
「はつむまに狐のそりし頭哉」
ついでに蕪村「初午や物種うりに日のあたる」、
子規に「初午や土手は行来の馬の糞」、
龍之介に「初午の祠ともりぬ雨の中」、
「初午」は初春の季語なので、大抵の人は俳句で用いているのですね。

「玉二郎」がこの前段では「多満二郎」となっています。
いつもながら変体仮名の使われ方が不思議。

 赤い角盆にのってるものが気になります。
お吸い物と白っぽいのは香の物で青いお皿はこれは稲荷揚げかな。



2020年5月4日月曜日

豆本 狐の嫁入 その3




 P.1

(読み)
こゝ尓玉 やふく
ここにたまやふく

ゑもんときつ
えもんときつ

ね奈可まの大
ねなかまのだい

ぶ个゛ん尓てせ可゛連を○
ぐげ んにてせが れを


○玉 二郎 とて
 たまじろうとて

十  五さひ
じゅうごさい

尓奈りし可
になりしか

バ个゛んぶく
ばげ んぷく

をさせ个る
をさせける

尓よく☓
によく



(大意)
ここに玉屋福右衛門と狐仲間である大分限の倅で
十五歳になり元服したばかりの玉二郎というものがおりました。


(補足)
「大ぶ个゛ん」、分限(ぶげん)。お金持ち、富者。財産家。
「せ可゛連」(せがれ)、変体仮名「連」はいろいろ形を変えますが、これくらいならすぐわかります。

「奈りし可バ」、「り」が小さくて「し」が二文字分くらいあります。
「个゛んぶく」、「ぷ」ではなく「ぶ」と濁点です。


 玉二郎は煙管を手に、扇子で顔を隠し恥ずかしがっている娘さんに何やら熱い視線を投げかけています。娘さんは一瞬にしてほの字の様子。

 前回の豆本より、こちらの絵のほうが人物の腰から下の線がやわらかで色気があります。
裾を足先だけだしてタップリ引き下ろしているのも美人画錦絵の手法。



2020年5月3日日曜日

豆本 狐の嫁入 その2




 見返し

(読み)
狐  の嫁 入
きつねのよめいり


(大意)



(補足)
 前回の表紙もこの見返しも文字が楷書です。

見返しのこの絵、奥に松、手前は藁のこも巻きのようにも見えますがさて何でしょうか?


2020年5月2日土曜日

豆本 狐の嫁入 その1




 表紙

(読み)
村 井静 馬 著
むらいしずま ちょ

狐  の嫁 入
きつねのよめいり


(大意)



(補足)
 前回の「きつねの嫁入」は堤吉兵衛が編輯出板人の豆本でしたが、
今回のものは明治9年御届で著者は村井静馬、出版は小森宗次郎です。

 表紙はお決まりの構図。
背景は赤一色の中に花は薄桃色の桜でしょうか。
ふたりのスキのないオシャレっぷりいいですねぇ。
男の左手のところに毎度頭にくるラベルが貼ってあります。
桜の枝でももっているのでしょうか。気になります。


表紙と色見本。




2020年5月1日金曜日

豆本 きつねの嫁入 その13




 奥付

(読み)
定價 壹錢
御届明治十八年四月丗日 吉川町
編輯出板人  堤吉兵衛


(大意)



(補足)
 江戸時代からの版画の流れは、(多色摺)木版画・銅版画・石版画など時代が下るにつれその方法は多岐にわたるようになりました。

 この明治18年の豆本は色鮮やかで発色もよく、またどの頁にも色ズレがありません。
豆本の木版の場合はどこかに必ずといってよいほど色ズレがあるものなのですが、この豆本には認められません。木版摺りではないのかもしれません。

 定価は1銭でこれ以前に出版されていた木版摺りだろうとおもわれる豆本は1銭5厘でしたから、値下げになっています。物価は上がっているのに安価で手に入るようになっています。印刷工程の変化によるためではないかとも推察されます。

 お玉の初恋が成就し、玉のような男子を授かり、一家親類栄えるという
誠にめでたいお噺でありました。


裏表紙。