2023年12月23日土曜日

人間一生胸算用 その33

P14 国立国会図書館蔵

(読み)

「口 ハよ多゛れを

 くちはよだ れを


多らして

たらして


ミている

みている


「者奈可゛いふ

 はなが いう


アいゝ

あいい


尓本ひ多゛

にほいだ


百  介 可゛所  の

ひゃくすけが ところの


くこをつけ多

くこをつけた


そふ多゛

そうだ


「ち川と小ぎくで

 ちっとこぎくで


者奈を可んで可ぐべ以

はなをかんでかぐべい


今 までハ

いままでは


ちり可ミで外

ちりがみでほか


可満なん多゛

かまなんだ


目は正  月 を

めはしょうがつを


三 度いちどき尓

さんどいちどきに


するきとり

するきどり


尓て目の

にてめの


さやを

さやを


者川して

はずして


な可めてゐる

ながめている

(大意)

「口はよだれをたらして見ている。

「鼻が言う、アいい匂いだ。百助の店のクコ油をつけたそうだ。

「ちょっと小菊(上質の懐紙)で鼻をかんで、いい匂いをかぐべい。今まではちり紙でしか、かんだことがねぇ。

「目は正月を三度いっぺんに楽しむつもりで、あたりを油断なく眺め回している。

(補足)

「百介可゛所の」、現在でも浅草で営業している「百助化粧品店」

「正月を三度」、閏月でも二度までなので、三度はありえないことのたとえ。「目の正月」(美しいものや珍しいものを見て楽しむたとえ。目正月。目の保養)ももじっている。

「目のさやを者川して」、『油断なく目をそそぐ。「あたりに目を付,目の鞘はづす刀ののり」〈浄瑠璃・平家女護島〉』とありました。

 四人がひざ突き合わせているだけで、どこかいかがわしさが出ている感じ。口のにやつきがいやらしい。

 

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