2023年12月4日月曜日

人間一生胸算用 その14

P5P6 国立国会図書館蔵

P5

(読み)

此 ものどものこしへ一トすじツゝの

このものどものこしへひとすじずつの


な王をつけあるじの心  これを志つ可と

なわをつけあるじのこころこれをしっかと


志めくゝ里ゐて手をうこ可さんとする

しめくくりいててをうごかさんとする


時 ハ手の奈王を由るめあ由まんと

ときはてのなわをゆるめあゆまんと


する時 ハあしの奈王を由るめミ奈\/

するときはあしのなわをゆるめみなみな


心  の下知尓志多可゛川て者多らく

こころのげちにしたが ってはたらく


事 うつ可ひのごとくさるまハ

ことうつかいのごとくさるまわ


しのごとし心  の

しのごとしこころの


こまの

こまの


多づ奈

たずな


由る

ゆる


す奈

すな


とハ

とは


こゝの

ここの


事 也

ことなり

(大意)

この者どもの腰へ一本ずつ縄を縛りつけ、あるじである心はこれをしっかりと握っていて、

手を動かそうとするときは手の縄をゆるめ、歩もうとするときは足の縄をゆるめる。

みな心の指示にしたがって働くさまは、鵜使いのようでもあり猿回しのようでもある。

心の駒の手綱を許すなとは、このようなことをいっているのである。

(補足)

「一トすじ」、「ト」の「ヽ」がありませんが、多分片仮名の「ト」ではないかと。

「な王をつけ」、平仮名「な」をつかうときもあれば「奈王を由るめ」のように変体仮名のときもあります。

「志めくゝ里ゐて」、一文字一文字判別するのが難しいところです。

「多づ奈由るす奈」、「許す」としましたが、緩(弛)(ゆる)めるなの意もあろうかとおもいます。

 

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