2023年12月29日金曜日

人間一生胸算用 その39

P17P18 国立国会図書館蔵

P18

(読み)

もの由へこゝへきことハき多れとも

ものゆへここへきごとはきたれども


本可のものゝやう尓於もしろ

ほかのもののようにおもしろ


ミも奈く多ゞ大 じんの

みもなくただだいじんの


き可゛もつてゐる者奈可゛ミ

きが もっているはなが み


ふく路へゑん里よ奈く手を

ぶくろへえんりょなくてを


川ゝこんで多いこちや屋

つっこんでたいこちゃや


やりて王可いもの尓志 うぎを

やりてわかいものにしゅうぎを


やりうれし可゛らせて

やりうれしが らせて


多のしむ者可り奈り

たのしむばかりなり


それよりとこ於さまり

それよりとこおさまり


个れハ口 ハきのそは尓

ければくちはきのそばに


つきそいゐてこゝぞ

つきそいいてここぞ


和可゛者多らきをミする

わが はたらきをみする

(大意)

(あまり楽しみのない)者ゆえ、ここへ来ることは来たが、他の者のように面白みもなく、ただ気前よく遊んでいる氣のふところへ遠慮なく手をつっこんで、鼻紙袋から祝儀(小菊紙)を太鼓持ちや茶屋や遣り手や若いものにやって、嬉しがらせ楽しむばかりであった。

 やがて、床がととのうと、口は氣のそばににじりよって「ここがおれの口のうまさのみせ(どころ」と)

(補足)

 余白いっぱい文章だらけ。しかしかすれやかけもなく読みやすい。

三行目四行目に「ゐ」と「ゑ」が並んでいます。「ゐ」のもとは「為(い)」、「ゑ」は「恵(え)」。

「多いこちや屋やりて王可いもの」、一読したときはどこで区切るかわかりませんでした。

「志うぎをやり」、ここの祝儀は上質の小菊紙であとで換金できたとありました。

 ここの立派な燭台にささっているのは百目蝋燭でしょうか。1本が100匁(もんめ/約375g)もあって、行灯よりずっと明るかった。

 

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