P5P6 国立国会図書館蔵
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(読み)
善 多満しゐのつう里き尓て
ぜんたましいのつうりきにて
京 傳 ハ無二郎 可者らの中 へ者いりて
きょうでんはむじろうがはらのなかへはいりて
ミれハ者らの中 尓一 ツのく尓あり
みればはらのなかにひとつのくにあり
これ可の小 天 地のいゝ奈りなつけて
これかのしょうてんちのいいなりなづけて
無状無象国(むしやうむぞうこく)と云 此 国 の多゛ん奈ハ
むじょうむぞうこく というこのくにのだ んなは
す奈ハち心 奈り者゛んとうハ
すなわちこころなりば んとうは
気(き)奈り心 と気とハもと一ツ多い
き なりこころときとはもといったい
ふんじん奈り耳目鼻口(ミゝめ者奈くち)の
ふんじんなり みみめはなくち の
四 ツのものハ於も手代 尓てやく人 也
よっつのものはおもてだいにてやくにんなり
あしと手ハ手代 より
あしとてはてだいより
こしもとそうりとり
こしもとぞうりとり
でつちまでを可袮天
でっちまでをかねて
つとめ中 てもいそ可゛しきつとめ奈り
つとめなかでもいそが しきつとめなり
(大意)
善魂の神通力で、京伝は無二郎の腹の中に入ってみると、
腹の中にひとつの国があった。これは善魂の言っていた小天地だった。名付けて無状無象国という。この国の旦那はつまり心である。番頭は気である。心と気はもともとはひとつであったものが分かれたものである。耳目鼻口の四つの者は、手代でも上位にあり、役人の役割をする。足と手は、手代から腰元(身の回りの細々した仕事)、草履取り、丁稚までを兼ねて勤め、なかでも忙しい勤めである。
(補足)
いっきに登場人物が多くなりにぎやかになりました。心がそれぞれの腰へ縄をつないでいます。また右の頁では、首から上に「口」「あし」「て」がのっていて、なんとも妙ちくりんです。着物の左袖に名前がついています。また着物の柄が「口」は片仮名のロ、「手」は片仮名のテ、「足」だけが片仮名の「エ」ですけどはてなぜでしょう?
「一ツのく尓あり」、「つ」の横棒がでだしできれているので、平仮名「つ」ではなくカタカナ「ツ」だとおもうのですが、さて?
「もと一ツ多いふんじん奈り」、ここも前とおなじかたちなので「ツ」だとおもいます。ただ読みが「ひとつ」ではなく「いったい」。分身(ぶんしん)は古くは「ふんじん」ともとありました。
「四ツ」、ここの「ツ」も先の二つとおなじかたちになっています。
「於も手代尓てやく人也」、辞書にないとおもって調べたらありました。重手代。やくのあとが「\/」にみえましたが、漢字の「人」でした。
「あしと手ハ手代より」、「ハ」の左がかけています。
「で川ち」、変体仮名「川」(つ)、片仮名「ツ」の元字。
「つとめ中てもいそ可゛しき」、つとめちゅうでも、としても意味は通じますが、区切るところは「つとめ/中(なか)でも」。
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