2023年12月20日水曜日

人間一生胸算用 その30

P13 国立国会図書館蔵

(読み)

氣ハ大 せい尓多て古可され

きはおおぜいにたてこかされ


むしやう尓氣可大 キく奈り

むしょうにきがおおきくなり


おるひ口 を神 尓つ連て

あるひくちをかみにつれて


む可ふし満むさしやへ来 り

むこうしまむさしやへきたり


やミと於ごり可ける口 ハ

やみとおごりかけるくちは


うまれて可ら者しめて

うまれてからはじめて


古ん奈うまひものを

こんなうまいものを


くひさけもへしと

くいさけもへしと


くら川天大 尓

くらってだいに


ゑひきハ

えいきは


多゛ん\/

だ んだん


ち可゛川て

ちが って


きてさゝの

きてささの


者を

はを


可川ひで

かついで


おどる尓

おどるに


さけを

さけを


きち可゛ひ

きちが い


水 と

みずと


いふ 事

いうこと


此 いハれ可

これいわれか

(大意)

 氣は大勢におだてられて、やたらと気が大きくなった。ある日、口をお供に連れて

向島武蔵屋(鯉料理の名店)へくりだし、むやみやたらと奢りまくった。

 口は生まれてから初めてこんなうまいものを食い、酒も腰がぬけるほどのんで大いに酔った。氣はだんだん様子が変わってきて、笹の葉をかついで踊る。酒を気ちがい水というのは、これがいわれか。

(補足)

「多て古可され」、表では「たてて」、裏では「こかす」。

「神尓つ連て」、「お供(とも)」の「供」は神仏に「供(そな)える」のとおなじ「供」なので、それに引っ掛けたいいまわしでしょうか。

「於ごり可ける」、ここの「る」は変体仮名「累」かもしれません。

「ゑひ」、『えい ゑひ 【酔ひ】酔うこと。よい。「皆―になりて」〈源氏物語•行幸〉』とありました。

「さゝの者を可川ひでおどる」、歌舞伎の狂乱物の所作事のまね、とものの本にありました。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿