P13 国立国会図書館蔵
(読み)
氣ハ大 せい尓多て古可され
きはおおぜいにたてこかされ
むしやう尓氣可大 キく奈り
むしょうにきがおおきくなり
おるひ口 を神 尓つ連て
あるひくちをかみにつれて
む可ふし満むさしやへ来 り
むこうしまむさしやへきたり
やミと於ごり可ける口 ハ
やみとおごりかけるくちは
うまれて可ら者しめて
うまれてからはじめて
古ん奈うまひものを
こんなうまいものを
くひさけもへしと
くいさけもへしと
くら川天大 尓
くらってだいに
ゑひきハ
えいきは
多゛ん\/
だ んだん
ち可゛川て
ちが って
きてさゝの
きてささの
者を
はを
可川ひで
かついで
おどる尓
おどるに
さけを
さけを
きち可゛ひ
きちが い
水 と
みずと
いふ 事
いうこと
此 いハれ可
これいわれか
(大意)
氣は大勢におだてられて、やたらと気が大きくなった。ある日、口をお供に連れて
向島武蔵屋(鯉料理の名店)へくりだし、むやみやたらと奢りまくった。
口は生まれてから初めてこんなうまいものを食い、酒も腰がぬけるほどのんで大いに酔った。氣はだんだん様子が変わってきて、笹の葉をかついで踊る。酒を気ちがい水というのは、これがいわれか。
(補足)
「多て古可され」、表では「たてて」、裏では「こかす」。
「神尓つ連て」、「お供(とも)」の「供」は神仏に「供(そな)える」のとおなじ「供」なので、それに引っ掛けたいいまわしでしょうか。
「於ごり可ける」、ここの「る」は変体仮名「累」かもしれません。
「ゑひ」、『えい ゑひ 【酔ひ】酔うこと。よい。「皆―になりて」〈源氏物語•行幸〉』とありました。
「さゝの者を可川ひでおどる」、歌舞伎の狂乱物の所作事のまね、とものの本にありました。
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