P7 国立国会図書館蔵
(読み)
「奈る本ど可う心 可゛多し可でハ
なるほどこうこころが たしかでは
いさくさハでき袮へ者川゛多゛
いさくさはできねえはず だ
「氣がいふ
きがいう
もし
もし
多゛ん奈
だ んな
きよ水 のぶ多い可ら
きよみずのぶたいから
おち多と思 川天
おちたとおもって
お可い奈されぬ可
おかいなされぬか
「心 可゛いふ
こころが いう
イヤ\/おれハ
いやいやおれは
きよ水 のぶ多いへ
きよみずのぶたいへ
の本゛川多と
のぼ ったと
思 川て
おもって
かふ
かう
まひ
まい
「者゛んとうさん
ば んとうさん
於まへの御者多らきで
おまえのおはたらきで
多゛ん奈のまへを志よじ
だ んなのまえをしょじ
与し奈尓
よしなに
於多のミさ
おたのみさ
奈どゝ
などと
七 つやのミせへ
ななつやのみせへ
き多
きた
やう尓
ように
くどく
くどく
(大意)
「なるほど、心がこうしっかりしているのでは、(無二郎は)あれこれふらふらできねぇわけだ」
気がいう、「もし旦那、清水の舞台から落ちたとおもって、お買いになりませぬか」
心がいう、「いやいや、オレは清水の舞台へのぼったとおもって、買うまいよ」
「番頭さん、お前のお働きで、旦那の前でいろいろ具合がうまく運ぶように頼むのさ」などと、七つ屋(質屋)の店に来たように、口説いている。
(補足)
初鰹買うか買わぬか談義の様子が絵にあらわれていておもしろい。
京伝は小さくなったまま、両手を上にあげ、まるで西洋人が呆れたという仕草で心の堅物さに参りましたと降参。その心は泰然自若胡座に腕組み、動じる様子は微塵もない。耳はなんとか番頭を説得しようと右手指先を番頭に向けて押し問答、口は耳の助太刀になればと右手左手を交互にそうですよそうですよとあたふた。氣は心と耳や口の間になってこれまたちょっとこまった様子。
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