P8 国立国会図書館蔵
(読み)
ある日無二郎 寺 まいりの
あるひむじろうてらまいりの
可へるさ両 ごくへんを
かえるさりょうごくへんを
とをり个る尓
とおりけるに
む
む
可ふ
こう
与り
より
げい
げい
しや
しゃ
来 り个れハ
きたりければ
目ハ多ちまち
めはたちまち
これをミつけてま与い
これをみつけてまよい
ミゝハ可れ可゛三 味せんを
みみはかれが しゃみせんを
きゝ多可゛りきを於多゛て
ききたが りきをおだ て
个れハ氣ハぐ川とこれ尓のり
ければきはぐっとこれにのり
心 尓すゝめ个れども心 ハきつと
こころにすすめけれどもこころはきっと
志ん本うして中\/
しんぼうしてなかなか
可゛てんせ須゛
が てんせず
(大意)
ある日、無二郎が寺前りの帰り、両国あたりを通ったときのこと、
向こうより芸者がやって来た。目はすぐにこれをみつけてクラっとし、
耳はこの芸者の三味線をききたがり、氣になんとかしてくれまいかと頼むと
グッとその気になって、心に勧めてみたが、心はかたく辛抱して
なかなかみとめてくれなかった。
(補足)
「寺」のくずし字は「ち」のような「る」のようなかたち。
「可へるさ」、(帰るさ)。調べてみるとありました。『〔「さ」は接尾語〕
帰る時。帰る途中。かえさ。「―に妹に見せむにわたつみの沖つ白玉拾(ひり)ひて行かな」〈万葉集•3614〉』
「両」のくずし字は「ち」の中に「α」のようなかたち。
「ミゝハ可れ可゛」、「ミ」が「手」のようにみえますが、ミスだとおもいます。
氣も目も耳も、無二郎の中に住んでいるためか、みな裸足です。
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