2023年12月12日火曜日

人間一生胸算用 その22

P8 国立国会図書館蔵

(読み)

「奈んとマアいゝ志与く多゛いじやア

 なんとまあいいしょくだ いじゃあ


袮へ可百  目可゛けを

ねえかひゃくめが けを


一ツて う

いっちょう


と本゛し

とぼ し


てへと

てえと


大 門 通 りの

おおもんどおりの


可奈もの

かなもの


ミせを

みせを


本める

ほめる


やふ尓

ように


保める

ほめる


心  がいふ

こころがいう


「とかくミる可゛

 とかくみるが


めのどく多゛

めのどくだ


ミる奈\/ サアあ由べ\/

みるなみるなさああゆべあゆべ


ざ川とし多

ざっとした


ところ可゛

ところが


二分も

にぶも


い多事 多゛

いたごとだ


「喜介 どん百 川 尓ハ小田原 の

 かすけどんももかわにはおだわらの


く王んしさんも

か んじさんも


いさ川しや川多可の

いさっしゃったかの


「も川と

 もっと


かんさしを

かんざしを


さしこミ

さしこみ


奈せへ

なせえ

(大意)

「なんとまぁ、いい燭台じゃねぇか。百目蝋燭を一梃灯してぇ」と、

大門通りの金物店を褒めまくる。

心がいう「こりゃ見るだけでも目の毒だ。見るな見るな。さあ、歩け歩け。ざっとみただけでも、(こちらの芸者さんは)二分もかかるだろうよ」

「嘉介どん、百川には小田原町の幹事さんもいらっしゃたかの」

「もっとかんざしをさしこみなせぇ」

(補足)

「百目可゛けを一ツてうと本゛してへ」、芸者を見た目はすっかりその気になっています。遊郭ではロウソクの灯っているあいだ、二人だけで楽しめたそうで、できるだけ長く楽しむには太くて長い大きいロウソク(=百目蝋燭)がほしいところ。

「嘉介」、「介」のくずし字は上(𠆢)と下(縦棒2本)の部品が重なります。

「く王んしさん」、「幹事」or「監事」としましたが、人の名前「寛治」かもしれません。

 芸者の着物柄は朝顔でしょうか、両手は振り袖をたぐって見えていません。嘉介どんが背負っている丸い荷物はなんでしょう。和傘を持っていますが、絵がにぎやかになるので扇子や傘を描くのは定番のようですが、実際もきっとそうだったのではとおもいます。

 

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