P10 国立国会図書館蔵
(読み)
此 うへハあの心 め
このうえはあのこころめ
を於ひ出しこの
をおいだしこの
可ら多゛を者゛んとうもち尓なされ多ら
からだ をば んとうもちになされたら
王れ\/もすこしハ多のしミも出来申 さん
われわれもすこしはたのしみもできもうさん
尓と口 をそろへ者奈をそろへて申 个れハさす可゛の
にとくちをそろえはなをそろえてもうしければさすが の
無次郎 可゛から多゛も氣ハ可王りやすくぐ川と
むじろうが からだ もきはかわりやすくぐっと
このそう多゛ん尓のる
このそうだ んにのる
「心 手ま
こころてま
くらして
くらして
袮て
ねて
いる
いる
「口 可゛いふ
くちが いう
なんと
なんと
こい川ア
こいつぁ
いゝ
いい
法 で
ほうで
ごぜへ
ごぜぇ
しやう
しょう
「手ハ
ては
まくら尓
まくらに
されて
されて
ゐ奈可゛ら
いなが ら
こい川ハ
こいつぁ
於もしろ
おもしろ
奈ゝこと
ななこと
志やれる
しゃれる
「京 伝 いふ
きょうでんいう
さて\/
さてさて
せ うし奈
しょうしな
事 じや
ことじゃ
此 く尓も
このくにも
すこし
すこし
ミ多゛れ
みだ れ
そめ尓し
そめにし
多゛ハへ
だ わへ
(大意)
この上は、あの心のやつを追い出し、この体を番頭のものにされたなら、われわれも少しは、楽しむことができるというものだ」と、口をそろえ、鼻をそろえて言うと、
さすがの無次郎の体も、氣が心持ちを変えたのか、グッとこの相談にのるてい(体)となった。
心は手枕をして寝ている。
「口が言う。何とこいつぁ、いい考えじゃねえか。
「手は枕にされていながら、こいつぁ『面白七子』(おもしろい)と洒落ている。
「京伝が言う、さてさて大変なことになったぞ。この国も少し『乱れ初めにし』だな。
(補足)
氣の、みなからの説得圧力(目はぎょっとするほどの眼力)をうけて、やや上体をひき加減にしている仕草が、なかなかです。
「ミ多゛れそめ尓し」、小倉百人一首14番河原左大臣の歌「みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに 乱れそめにし われならなくに」のもじりとありました。
氣の使っている立派な煙管箱、細かいことにこだわる京伝らしく、蟻組みの木組みになっています。
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