2023年12月19日火曜日

人間一生胸算用 その29

P11P12 国立国会図書館蔵

P12

(読み)

「ミ奈\/

 みなみな


き尓

きに


於者むきをいふ

おはむきをいう


「アノやうな

 あのような


けち奈心  を

けちなこころを


ミ多事 可゛ござりませぬ

みたことが ござりませぬ


あい川者

あいつは


一 万 年 も

いちまんねんも


いきる心  で

いきるこころで


ごさりませ ふ

ござりましょう


「口 可゛いふ王多くしも朔 日 十  五日 尓

 くちが いうわたくしもついたちじゅうごにちに


やう\/やすひもの一 まひツゝ

ようようやすひものいちまいずつ


堂べるより本可百  五十  する

たべるよりほかひゃくごじゅうする


ときも可ツ本奈ぞハ可い多゛

ときもかつおなぞはかいだ


事 もござりません者多らき

こともござりませんはたらき


のある袮こ尓ハ

のあるねこには


於とりさ

おとりさ


「於まへの事 をハきんじよの

 おまえのことをばきんじょの


むすこ志 うもきのきい多

むすこしゅうもきのきいた


於人 多゛と可げで本めます

おひとだ とかげでほめます

(大意)

皆々、氣のご機嫌をとる。

「あのようなけちな心をみたことがござりませぬ。あいつは一万年も生きる心でございましょう。

「口がいう。わたしも月二回一日と十五日に、やっと、安い干物を一枚ずつ食べるほかは、

百五十文と安くなった鰹なぞ匂いもかいだことはありません。働きのよい猫にも劣ります。

「おまえのことは近所の息子衆も、気の利いたお人だと、陰でほめています。

(補足)

「堂べるより本可」、変体仮名「堂」(た)はあまりみません。

 氣の右手に持っているのは灰吹、吸い殻を吹きおとしたり、たたき入れたりします。口は煙管をもて遊び顔は入れ歯状態。

 鼻は鼻毛を出すほど鼻息荒くふんぞりかえり、耳はおべっかにいそがしそう。

うしろの間仕切り屏風、疫病神じゃないしなんでしょう? 

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