P9 国立国会図書館蔵
(読み)
それより
それより
可バやきやの
かばやきやの
まへをとをり
まえをとおり
个れハ者奈可゛
ければはなが
可ぎつけ口 可゛
かぎつけくちが
くひ多可゛り
くいたが り
ま多きを
またきを
そゝの可し
そそのかし
心 尓すゝ
こころにすす
むれども
むれども
心 多し可
こころたしか
なれハ
なれば
ま川゛
まず
南 一 の
なんいちの
む多゛と
むだ と
い川
いっ
可う尓
こうに
せ う
しょう
ち
ち
せ須゛
せず
心 「サア\/
こころ さあさあ
ち川とも者やく
ちっともはやく
うちへ可へる可゛いゝ
うちへかえるが いい
すのこん尓やく
すのこんにゃく
のといつて
のといって
於れまでを
おれまでを
あぢ奈
あじな
心 尓
こころに
する
する
(大意)
それから、蒲焼屋の前を通ると、鼻がかぎつけ、口が食いたがり、
またまた、氣をそそのかす。心に勧めてはみるものの、心は動ぜず、
南鐐一枚の無駄と、まったく承知しない。
心「さあさあ、さっさと早く家へ帰った方がよい。四の五の言って、
俺までその気にさせるのか」
(補足)
「可バやきやの」、「や」がふたつあります。後者の「や」は現在のものとかたちがおなじですが、前者は「ゆ」に見えてしまいますが「や」です。「ゆ」は変体仮名「由」で、中の縦棒がやや曲がります。この頁の下段「二し由可さんし由の」参照。
「すのこん尓やくのといつて」、「四の五の言って」のもじり、言葉遊び。
「南一」、「南鐐」(なんりょう)、『② 二朱銀の通称。表面に「以南鐐八片換小判一両」と刻まれていた』とありました。
台詞の前に小さく話者が記されています。いろいろ工夫しています。
「大蒲焼」の看板行灯の骨組みがこれまた実に丁寧でまるで設計図のよう。京伝の性格の一端がわかります。
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