2024年1月19日金曜日

人間一生胸算用 その60

P25P26 国立国会図書館蔵

P26

(読み)

かの京  伝 ハ右 の

かのきょうでんはみぎの


志ゞ うをとくとミて

しじゅうをとくとみて


ゐ多りし可゛思 ふやうハ王れ思 ハ須゛も

いたりしが おもうようはわれおもわず も


志者゛らくこの可ら多゛をすミ可と奈し

しば らくこのからだ をすみかとなし


こと尓とも多゛ちの無二郎 可゛可ら多゛の

ことにともだ ちのむじろうが からだ の


事 奈れバい可尓もきのとく奈事 也

ことなればいかにもきのどくなことなり


志可しい个んをし多い尓ハ

しかしいけんをしたいには


とう人 の可ら多゛の中 尓ゐる

とうにんのからだ のなかにいる


於れ奈れハそれも

おれなればそれも


でき

でき


須゛これハまつ多く

ず これはまったく


心  可゛心  のゐ所  尓いぬ

こころが こころのいどころにいぬ


由への事 奈りと

ゆへのことなりと


可年多いこ尓て

かねたいこにて


心  の由くへを多つ年る

こころのゆくへをたずねる

(大意)

 かの京伝は、右の始終をすべて見ていたのだが、思うには「われおもわずも、しばらくこの体をすみかとし、ことに友達の無二郎のからだのことなれば、いかにも気の毒なことである。しかし、意見をしたくとも、当人の体の中にいるのがおれであっては、それもできず、これはまったく心が心の場所にいないからなのだ」と、鉦太鼓をならして、心の行方を尋ねる。

(補足)

「きのとく奈事也」、ここの「也」のくずし字は三画目の半円部分だけが残った感じ。

京伝、無二郎が体の中をさまよう絵はまさに、ミクロの決死圏。

 

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