2024年1月14日日曜日

人間一生胸算用 その55

P24 国立国会図書館蔵

(読み)

「口 をつれて

 くちをつれて


こぬ可ら

こぬから


手ハ多ゞ

てはただ


多んまりて

だんまりで


多ゝき

たたき


あふ

あう


「これ\/のど可゛つまるマア者奈してくれま和多で

 これこれのどが つまるまあはなしてくれまわたで


くびを志めるとハきい多可゛

くびをしめるとはきいたが


王里やア者多可で

わりゃぁはだかで


くびを志める奈

くびをしめるな


「可多奈ハぶしの

 かたなはぶしの


多満しゐでバ本う

たましいでばほう


て うハきをひの

ちょうはきおいの


多満しゐ多゛

たましいだ


かくごう

かくごぉ


しやア可れ

しやぁがれ

(大意)

「口を連れてこなかったので、手はただ、だまったままたたきあう。

「これこれ、喉がつまる。あぁ放してくれ。真綿で首を締めるとは言うが、わりゃぁ、裸で首をしめるな。

「刀は武士の魂、出刃包丁はおとこぎの魂だ。覚悟しやぁがれ。

(補足)

「きをひ」、『きおい きほひ 【競ひ・勢ひ】② 威勢がよいこと。勇ましいこと。俠気。「贔屓(ひいき)の―手打の連中」〈滑稽本・根南志具佐〉』とあり、「俠気」に『おとこぎ をと―【男気・俠気】男らしい性質・気持ち。自分の損得を顧みず弱い者のために力を貸す気性。義俠心。俠気。 ↔女気。「―のある人」』とありました。

「王里やア」、変体仮名「里」が長細いので二文字にみえます。

 出刃包丁を握りしめる任侠の博打打ち、こういう出刃の握り方もあるのでしょうけど、自分に刃が向いているので心配、なので右肩を自分で刺しちゃったのか、血が激しくふいてます。

 手は両手に加えて、首から上が5人分くらいのデッカイ握りこぶし、これじゃぁまわりはひとたまりもない、だまって殴り続けるやつが一番怖い。

 

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