2024年1月16日火曜日

人間一生胸算用 その57

P25P26 国立国会図書館蔵

P25

(読み)

きハぐ川と王るき尓

きはぐっとわるきに


奈り手尓いひ付 て

なりてにいいつけて


あるよひそ可尓

あるよひそかに


その可年を

そのかねを


ぬすミ尓やりし可゛

ぬすみにやりしが


志そく奈川て

しそこなって


ミつけられ个れハ

みつけられければ


ぐ王いふん王るく

が いぶんわるく


無次郎 可から多゛

むじろうがからだ


いまハ町  内 尓

いまはちょうないに


ゐら連須゛

いられず


てん\/尓志よ

てんでんにしょ


どうぐを

どうぐを


もちあしめ尓

もちあしめに


ま可せ天

まかせて


よ尓け尓

よにげに


し多るぞ

したるぞ


う多て个れ

うたてけれ

(大意)

 すると、氣は悪心(あくしん)がぐぐっともたげ、手に言いつけて、ある夜、ひそかにその金を盗みにやったが、しそこなって見つけられてしまったため、外聞悪く、無次郎の体は今は町内にいることができなくなってしまた。皆てんでに身の回りの荷物を持ち、足にまかせて、夜逃げしてしまってなんとも情けないことである。

(補足)

「志そく奈川て」、仕損って(しそこなって)ですけど、こんな言い回しもしたのかも。

「う多て个れ」、「う多て」は『転〔「うたた」の転〕(形動ナリ)情けない。いとわしい。「―なりける心なしのしれ者かな」〈宇治拾遺物語•2〉』などとありました。

「てん\/尓志よどうぐをもち」、鼻は傘、目は箒に籠、手は下駄、氣は菅笠、足は行灯、耳と口は風呂敷を背負っています。いろいろ思案するも当人たちと持ち物に洒落はなさそう、まったくの手当たり次第。

 

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