P19 国立国会図書館蔵
(読み)
き可゛いふ
きが いう
「奈ん多゛いひのこし多事 可
なんだ いいのこしたことが
あるそん奈らまて
あるしんならまて
ミゝ可゛さきへ可へ川多可ら
みみが さきへかえったから
与び可へして
よびかえして
きくべい
きくべい
「どうも可へし多く於川せん
どうもかえしたくおっせん
与奈どゝいつもの
よなどどいつもの
あハせ可ゞミ
あわせかがみ
あしハ
あしは
いそ
いそ
いで者しこを於り个れときハ
いではしごをおりけれどきは
ま多゛二可い尓のこ川てこまらせる
まだ にかいにのこってこまらせる
足
あし
「サア多゛ん奈どうでごさりや春
さあだ んなどうでござりやす
それハミ連ん\/
それはみれんみれん
「扨 きぬ\/と奈り个れハあし可゛
さてきぬぎぬとなりければあしが
奈くてハ可へられ須゛と与び尓
なくてはかえられず とよびに
やれハあしハいそき来多り
やればあしはいそぎきたり
ミ奈\/を志由ごし可へらんと
みなみなをしゅごしかえらんと
志个れども氣者可りハと可く
しけれどもきばかりはとかく
あとへのこり
あとへのこり
らち可゛
らちが
あ可ぬ由へやう\/
あかぬゆえようよう
多゛満してつれ可へ累
だ ましてつれかえる
(大意)
氣が言う、「何だ、まだ言い残したことがあるのか。そんなら待て。耳が先へ帰ったから、呼び返して聞こう」。
「どうしても帰したくおっせんよ」などと、いつもの(調子を)あわせ鏡。
足は急いで梯子を降りたが、氣はまだ二階に残って困らせている。
足「さぁ旦那、どうしたんでございやす。それは未練みれん」。
「さて、一夜あけて朝の別れとなれば、足がなくては帰れずと呼びにやると、足は急いでやって来た。皆々をまとめて帰ろうとしたが、氣だけはあれやこれやと後へ残り、埒(らち)があかぬゆえ、なんとかだまして連れ帰った。
(補足)
「扨」(さて)、変体仮名「於」(お)ににてます。よく出てきます。
「きぬ\/と奈り」、『きぬぎぬ 衣衣・〈後朝〉② 相会った男女が一夜をともにした翌朝。また,その朝の別れ。ごちょう。こうちょう。「―の濡れて別れし東雲ぞ」〈宇津保物語•国譲上〉』
「志由ごし」、読めましたが意味が?「守護」か、とわかって納得。
「累」、変体仮名「累」(る)はたまに出てきます。
遊郭二階の廊下・手摺・障子や階段と、丁寧に描かれています。
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