2024年1月25日木曜日

人間一生胸算用 その66

P29 国立国会図書館蔵

(読み)

かくて無 名 や無次郎 ハいよ\/

かくてむみょうやむじろうはいよいよ


大 極 上  々  吉 の人 間 と奈り

だいごくじょうじょうきちのにんげんとなり


本川と多めいきをつくひやうし尓

ほっとためいきをつくひょうしに


京  伝 を者き多し个れバ

きょうでんをはきだしければ


京  伝 ハ出る与り者やく

きょうでんはでるよりはやく


ふで於川とり

ふでおっとり


右 の志し う

みぎのしじゅう


三 さつのさうし尓

さんさつのそうしに


つゞ里个る

つづりける


「京  伝 ハ者き

 きょうでんははき


出されて

だされて


ミ多所  可

みたところが


無次郎 可

むじろうが


ふうぞく

ふうぞく


む可し尓

むかしに


可王り

かわり


者んつうの

はんつうの


奈り可多ち

なりかたち


由へいよ\/

ゆへいよいよ


きめ う可゛る

きみょうが る


「口 可ら

 くちから


ごく王うの

ごこ うの


さすと

さすと


いゝツこ

いいっこ


那し

なし

(大意)

かくて、無名屋無次郎は、ますます大極上々吉の人間となり、ホッとため息をついた拍子に、京伝を吐き出し出した。京伝は出るより早く、筆をすぐさまつかみ取り、今までの一部始終を三冊の草紙に綴った。

 京伝は吐き出されて、無次郎を見たところ、無次郎の姿形が昔とかわり、(以前と比べ)人間がまるくなったようにみえ、ますます不思議なことだとおもった。

 口から後光がさしている(この絵のこと)なんていうことは、言いっこなし。

(補足)

「於川とり」、『おっと・る 【押っ取る】(動ラ四)〔「おしとる」の転〕

① 勢いよくつかみ取る。「童にもたせたる太刀―・り,するりと抜きて」〈曽我物語1〉』

「右の志しう」、「志しう」が始終とはなかなか気づきませんなんだ。

「半通」、通と不通の真ん中にあることをいう。つまり人としてごく平凡で普通のことをいう。未熟なのにいかにも通ぶるふるまいをする半可通とは別である。とものの本にはありました。

 煙管一式と煙草盆が妙に微に入り細で描き込まれています。きっと京伝が使っていたものに違いありません。

 

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