P29 国立国会図書館蔵
(読み)
かくて無 名 や無次郎 ハいよ\/
かくてむみょうやむじろうはいよいよ
大 極 上 々 吉 の人 間 と奈り
だいごくじょうじょうきちのにんげんとなり
本川と多めいきをつくひやうし尓
ほっとためいきをつくひょうしに
京 伝 を者き多し个れバ
きょうでんをはきだしければ
京 伝 ハ出る与り者やく
きょうでんはでるよりはやく
ふで於川とり
ふでおっとり
右 の志し う
みぎのしじゅう
三 さつのさうし尓
さんさつのそうしに
つゞ里个る
つづりける
「京 伝 ハ者き
きょうでんははき
出されて
だされて
ミ多所 可
みたところが
無次郎 可
むじろうが
ふうぞく
ふうぞく
む可し尓
むかしに
可王り
かわり
者んつうの
はんつうの
奈り可多ち
なりかたち
由へいよ\/
ゆへいよいよ
きめ う可゛る
きみょうが る
「口 可ら
くちから
ごく王うの
ごこ うの
さすと
さすと
いゝツこ
いいっこ
那し
なし
(大意)
かくて、無名屋無次郎は、ますます大極上々吉の人間となり、ホッとため息をついた拍子に、京伝を吐き出し出した。京伝は出るより早く、筆をすぐさまつかみ取り、今までの一部始終を三冊の草紙に綴った。
京伝は吐き出されて、無次郎を見たところ、無次郎の姿形が昔とかわり、(以前と比べ)人間がまるくなったようにみえ、ますます不思議なことだとおもった。
口から後光がさしている(この絵のこと)なんていうことは、言いっこなし。
(補足)
「於川とり」、『おっと・る 【押っ取る】(動ラ四)〔「おしとる」の転〕
① 勢いよくつかみ取る。「童にもたせたる太刀―・り,するりと抜きて」〈曽我物語1〉』
「右の志しう」、「志しう」が始終とはなかなか気づきませんなんだ。
「半通」、通と不通の真ん中にあることをいう。つまり人としてごく平凡で普通のことをいう。未熟なのにいかにも通ぶるふるまいをする半可通とは別である。とものの本にはありました。
煙管一式と煙草盆が妙に微に入り細で描き込まれています。きっと京伝が使っていたものに違いありません。
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