2024年1月7日日曜日

人間一生胸算用 その48

P21P22 国立国会図書館蔵

P21

(読み)

「目者そら奈き尓

 めはそらなきに


奈きそら奈ミ多゛を

なきそらなみだ を


こ本せバそば尓

こぼせばそばに


手可゛ゐて

てが いて


ふひてやる

ふいてやる


あしハ

あしは


うしろ尓

うしろに


ちゞこ

ちじこ


まり

まり


ゐて

いて


志ひり

しびり



きらし

きらし


飛多い

ひたい


ちりを

ちりを


つけて

つけて


こ多へ

こたえ


ゐる

いり


氣可いふ

きがいう


「こゝていち者ん

 ここでいちばん


め可ら

めから


者奈へ

はなへ


ぬけ

ぬけ


でる

でる


やう奈

ような


うそを

うそを


つ可ふと

つかうと


思 ふ可゛

おもうが


者奈を

はなを


つ連て

つれて


こぬ可゛

こぬが


くやしひ

くやしい

(大意)

目はうそ泣きに泣き、うそ涙をこぼせば、そばに手がいて拭いてやる。

足はうしろに縮こまって座り、しびりをきらし、額に塵(ちり)を付けたりして我慢している。

氣が言う、「ここでひとつ、目から鼻へ抜け出るような嘘をつこうかとおもったが、鼻を連れてこなかったのが悔しい」。

(補足)

「そら奈ミ多゛を」、ちいさな「ミ」があります。やさしい手は自分の両手があるのに、あたまの手で拭いてやっています。目の着物柄のメガネがおしゃれです。

「飛多いちりをつけて」、額に塵や藁をつけてしびりをまぎらわす仕草。眉唾などとおなじ。

 皆金を借りるためにそれぞれしらじらしい振る舞いをする中で、氣だけが殊勝にかしこまっている。

 着物の柄は、目がメガネ、氣はキ、口はロ、そして足はア。

 

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