2024年1月23日火曜日

人間一生胸算用 その64

P27P28 国立国会図書館蔵

P28

(読み)

さて

さて


京  伝 ハ心  を

きょうでんはこころを


どう多゛うして

どうど うして


もとのむ年の所  へ多ち

もとのむねのところへたち


可へりけれハ心  ハ可の

かえりければこころはかの


さつ可りし三いろの

さづかりしみいろの


うちをひらき

うちをひらき


せいじんの

せいじんの


ゐし与を

いしょを


ミゝ尓与んで

みみによんで


き可せつぎ尓

きかせつぎに


ぢごくの

じごくの


ゑ川を目尓

えずをめに


ミせ又

みせまた


太 神 くうの

だいじんぐうの


P28

きよくいさぎ

きよくいさぎ


与きあらひ

よきあらい


よ年を口尓

よねをくちに


のませさて

のませさて


志んぎ

じんぎ


五じやうの

ごじょうの


奈王を

なわを


も川てあし

もってあし


手を志ハり

てをしばり


个れバきも

ければきも


於のつ可ら

おのずから


本んしやうに

ほんしょうに


可へり

かえり

(大意)

 さて、京伝は心をともなって、もとの胸のところへ立ち帰ると、心はあの授かった三色の中を開き、聖人の遺書を耳に読んで聞かせた。次に、地獄の絵図を目に見せた。また、太神宮の清く潔い洗い米を口にのませた。さて、神器「五常の縄」をもって足・手をしばれば、氣もおのずから正気をとりもどした。

(補足)

「ゐし与」、「ゑ川」、「ゐ」のもと字は「為」、「ゑ」は「恵」。

「太神宮」、よく見ると「大神宮」ではありませんでした。意味はおなじ。

「五常」、「仁・義・礼・智・信」。

 ここの絵は文章とまったく一致しています。耳は心の足元の聖人の遺書に見入り、目は地獄の絵図を見てのけぞりびっくり、その脇で京伝すまし顔。口は洗い米を口に含み、足・手は後ろ手に縛られ、あれっ、鼻、はなはどうした!

 

0 件のコメント:

コメントを投稿