自序 国文学研究資料館蔵
(読み)
諺(ことハざ)尓北州(本く志 う)乃千歳(せんねん)も限(可ぎ)り有(あり)といへ
ことわざ に ほくしゅう の せんえん も かぎ り あり といへ
る尓などてかく
るになでてかく
苦界(く可゛い)十 年 の限(可ぎ)りなき事 よ九年 面壁(めんへき)の達(多゛る)しう
くが い じゅうねんの かぎ りなきことよくねん めんぺき の だ る しう
と
と
いへども年(ねん)ン一ツ者以の王累長(奈可゛)き事 を知(し)るべ可ら須゛
いへども ねん んいっぱいのわる なが きことを し るべからず
(大意)
諺に「北州に住む者の寿命にも千年という限りがある」というが、どうしてこの遊郭(苦界)の十年に限りはないのだろうか。面壁九年の悟りを開いた達磨大師でさえも、それよりながい十年いっぱいのつらい事を知らないであろう。
(補足)
「㣺州(本く志う)」、「北俱盧洲(ほつくるしゆう)」の略。〘仏〙 古代インドの世界観で,須弥山(しゆみせん)の北にある大陸。その住民の寿命は千年に及ぶとされる。
「などて」、「(副)〔副詞「など(何)」に助詞「て」の付いたもの〕どうして。なぜ。「―かくはかなき宿りは取りつるぞ」〈源氏物語•夕顔〉」
「㣺州(本く志う)」、「北」のくずし字は「「㣺」のように「小」+「丶」。「北」という漢字には二つあると覚えたほうがよさそう。
「九年面壁」、「年ン一ツ者以の」、一つはくずし字の「年」でもうひとつは楷書。
ものの本に、苦界十年といっても実際は、その前後に、見習い一年、お礼奉公一年を加算して都合十二年かかるとありました。
この黄表紙を楽しむためにも、この本がとても参考になります。
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