2024年1月17日水曜日

人間一生胸算用 その58

P25P26 国立国会図書館蔵

P25

P26

(読み)

P25

口 可゛いふ

くちが いう


「於らァいつそもとでを

 おらぁいっそもとでを


くめんしてち川と

くめんしてちっと


き多ねへ可゛こま

きたねえが こま


ものミせでも

ものみせでも


多゛すべい

だ すべぇ


「ナニサ飛゛く\/

 なにさび くびく


さ川しやん奈

さっしゃんな


うしろ尓やア

うしろにゃあ


此 者奈可

このはなが


飛可へて

ひかえて


いる

いる


「あし可いふ

 あしがいう


こんやハとん多゛

こんやはとんだ


さふひ者ん多゛

さぶいばんだ

P26

多ひを可ふつて

たびをかぶって


くれハよ可つ多

くればよかった


於れもこれ可ら

おれもこれから


かゝとで

かかとで


きんちゃくでも

きんちゃくでも


きらねハ

きらねば


ならぬ

ならぬ

(大意)

口が言う、「おらぁ、いっそ、もとでを工面して、ちっときたねぇが、小間物店でもだすべぇ。

「なにさ、ビクビクしなさんな。うしろにゃ、この鼻がひかえている。

「足が言う、今夜はとんだ寒い晩だ。足袋をかぶってくればよかった。おれもこれから、かかとで巾着を切らねばならぬ。

(補足)

「こまものミせ」、汚物を吐く、ゲロをする。

「ナニサ」、十二月もみえる。

「さふひ者ん多゛多ひを可ふつてくれハよ可つ多」、濁点がないので何度か読まないと理解できません。

「きんちゃくでもきらねハ」、スリのこと。

 パッとしない言い回しが続きます。

 

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