2024年1月8日月曜日

人間一生胸算用 その49

P21P22 国立国会図書館蔵

P22

(読み)

p21

口 可゛いふ

くちが いう


「この多ひの金 子

 このたびのきんす


を於可しく多゛

をおかしくだ


されぬと

されぬと


和多くしハ

わたくしは


あい

あい


者て

はて


袮バ

ねば


P22

奈り

なり


ませぬ

ませぬ


可奈し

かなし


や\/  と

やかなしやと


そら\゛/しき口 本こを

そらぞら しきくちぼこを


申  うしろを

もうしうしろを


むいて志多を

むいてしたを


多している

だしている


耳 ハ奈んの志与せん

みみはなんのしょせん


も奈く人 そよめき尓

もなくひとそよめきに


此 所  へい川しよ尓

このところへいっしょに


き多り

きたり


大 キ尓う川天

おおきにうって


ミゝをふさぎいる

みみをふさぎいる


「こん奈さへぬ事 を

 こんなさえぬことを


きくと志川多ら

きくとしったら


こまひもの

こまいもの

(大意)

口が言う、「このたびの金子をお貸しくだされぬと、わたしくしは相果てねばなりませぬ。悲しやかなしや」と、空々しくうまいことを言って、うしろを向いて舌を出している。

耳は何のあてもなく、なんとはなしに皆についてきてしまったが、ひどくがっかりして耳をふさいでいる。

「こんな白々しい事を聞くとわかっていたら、来なかったのに」

(補足)

「和多くしハ」、変体仮名「和」(わ)は平仮名の「い」とそっくりです。

「申うしろを」、送り仮名がついて「申うし」ではありません。

「志与せんも奈く」、所詮もなく、現在では所詮なになにとつかわれますけど・・・

「大キ尓う川天」、この「うって」は「打つ」なのか「鬱」なのか、さて・・・

 耳の着物の柄は片仮名の「ミ」でしょうけど、羽織のほうの「H」or「エ」はさてさて・・・

 

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