P21P22 国立国会図書館蔵
P21
(読み)
かくてむ二郎 可゛から多゛ハ
かくてむじろうが からだ は
ことの本可さハ可゛しく
ことのほかさわが しく
なりきハ多゛ん\/
なりきはだ んだん
ふとく奈りて
ふとくなりて
まい者゛ん\/
まいば んまいばん
与しハらへ可よひ
よしはらへかよい
希れバ奈ん本゛
ければなんぼ
可年のある
かねのある
志ん多゛いても
しんだ いでも
そう\/ハ
そうそうは
つゝ可須゛
つづかず
此 ころハ大 き尓
このごろはおおきに
可り可゛てきて
かりが できて
行可れぬやうに
ゆかれぬように
奈り个れハ
なりければ
口 可゛すゝミ出
くちが すすみで
於者゛さ満の
おば さまの
ところへ行
ところへゆき
和多くし可゛
わたくしが
口 へんこうを
くちべんこうを
も川て可年を
もってかねを
可りませ ふと
かりましょうと
ミ奈\/
みなみな
つ連多ち
つれだち
於者の
おばの
ところへ
ところへ
し可ける
しかける
(大意)
かくて無二郎のからだは、ことのほか騒がしくなり、氣はだんだん図太くなって、毎晩毎晩、吉原へ通ったため、いくら金がある身代でも、そうそうは続かなかった。この頃は大きな借金ができて、ゆくことができなくなったため、口がすすみ出て「おばさまのところへゆき、わたくしがうまく言って、金を借りましょう」と、皆を連れ立って、おばのところへおしかけた。
(補足)
「かくて」、「くて」一文字で変体仮名「毛」に見えなくもない。
「さハ可゛しく」、「さ」がその左上にある「き」とくらべても、「き」にちかい。彫師のうっかりかもしれません。
「与しハらへ可よひ」、「らへ可」が判別しにくい。
「つゝ可須゛」、「つづかず」と読むのに一苦労。
「口可゛すゝミ出」、「すゝミ」がなやみます。
「於者゛さ満のところへ行」、息子が吉原遊びなどで不始末をしたときや、息子と親父の不仲を取り持ったりするのは当時よくあったこと、とはものの本にありました。
「口へんこうを」、ながれで意味はわかります。しかし辞書で調べてもヒットしない。いろいろ試したら「べんこう【弁口】」『口のきき方。言い方。しゃべり方。また,口のきき方がうまいこと』とありました。ほっ。
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