2024年1月6日土曜日

人間一生胸算用 その47

P21P22 国立国会図書館蔵

P21

(読み)

かくてむ二郎 可゛から多゛ハ

かくてむじろうが からだ は


ことの本可さハ可゛しく

ことのほかさわが しく


なりきハ多゛ん\/

なりきはだ んだん


ふとく奈りて

ふとくなりて


まい者゛ん\/

まいば んまいばん


与しハらへ可よひ

よしはらへかよい


希れバ奈ん本゛

ければなんぼ


可年のある

かねのある


志ん多゛いても

しんだ いでも


そう\/ハ

そうそうは


つゝ可須゛

つづかず


此 ころハ大 き尓

このごろはおおきに


可り可゛てきて

かりが できて


行可れぬやうに

ゆかれぬように


奈り个れハ

なりければ


口 可゛すゝミ出

くちが すすみで


於者゛さ満の

おば さまの


ところへ行

ところへゆき


和多くし可゛

わたくしが


口 へんこうを

くちべんこうを


も川て可年を

もってかねを


可りませ ふと

かりましょうと


ミ奈\/

みなみな


つ連多ち

つれだち


於者の

おばの


ところへ

ところへ


し可ける

しかける

(大意)

 かくて無二郎のからだは、ことのほか騒がしくなり、氣はだんだん図太くなって、毎晩毎晩、吉原へ通ったため、いくら金がある身代でも、そうそうは続かなかった。この頃は大きな借金ができて、ゆくことができなくなったため、口がすすみ出て「おばさまのところへゆき、わたくしがうまく言って、金を借りましょう」と、皆を連れ立って、おばのところへおしかけた。

(補足)

「かくて」、「くて」一文字で変体仮名「毛」に見えなくもない。

「さハ可゛しく」、「さ」がその左上にある「き」とくらべても、「き」にちかい。彫師のうっかりかもしれません。

「与しハらへ可よひ」、「らへ可」が判別しにくい。

「つゝ可須゛」、「つづかず」と読むのに一苦労。

「口可゛すゝミ出」、「すゝミ」がなやみます。

「於者゛さ満のところへ行」、息子が吉原遊びなどで不始末をしたときや、息子と親父の不仲を取り持ったりするのは当時よくあったこと、とはものの本にありました。

「口へんこうを」、ながれで意味はわかります。しかし辞書で調べてもヒットしない。いろいろ試したら「べんこう【弁口】」『口のきき方。言い方。しゃべり方。また,口のきき方がうまいこと』とありました。ほっ。

 

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