中P8 東京都立図書館蔵
(読み)
「こづち尓志゛与さいハ奈い
こづちにじ ょさいはない
ものをこのようない多
ものをこのようないた
ごとをしてく連てハ
ごとをしてくれては
てんとめい王くじや
てんとめいわくじゃ
「このやう尓多からをもつ
このようにたからをもつ
とハてんとふくらすゞ
とはてんとふくらすず
めでハ奈ふてきつい
めではのうてきつい
ふくしやすゞめときた
ふくしゃすずめときた
「けんどん者゛ゝこのてい
けんどんば ばこのてい
をミてうらやま
をみてうらやま
志可゛る
しが る
「あいつらハうまい
あいつらはうまい
事 をしおつ多
ことをしおった
奈んでも
なんでも
こつちへして
こっちへして
こませ
こませ
多いもの多゛
たいものだ
「こと王りいふて
ことわりいうて
可へさしやれ
かえさしやれ
ぬ可
ぬか
(大意)
「打出の小槌はなかなかよいものだが、
このような散財をしてくれては、
ほんとうに困ったものじゃ」
「このような宝物をもらうとは、
まったく、ふくら雀ではなくて、
とんでもない大金持ちの雀ではないか」
「けちんぼ婆は、この様子を見て
羨ましがった
「あいつらはうまいことをしおった。
なんでもよいから、こっちへ
してもらいたいものじゃ」
「(こんなにたくさんの宝物を)断って
返すことはできぬものか」
(補足)
「正」「善」「惡」が袂や背中に記されています。
「うらやま志可゛る」、「こ」「と」は区別がやっかいであることは何度も記しましたが、ここの「う」も一画目から二画目へのつながりが「こ」にも「と」にもみえます。
「こつちへしてこませ」、ひとつひとつ丁寧に分解するように読まないとよくわかりません。
正直夫婦はたくさんの金銀宝物を目の前にしても、派手に喜んではいないような困った様子、に描いたのかもしれません。
それに比べて慳貪婆は心底、うらやましい〜といった様子。
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