2023年10月3日火曜日

桃太郎発端話説 その41

中P8 東京都立図書館蔵

(読み)

「こづち尓志゛与さいハ奈い

 こづちにじ ょさいはない


ものをこのようない多

ものをこのようないた


ごとをしてく連てハ

ごとをしてくれては


てんとめい王くじや

てんとめいわくじゃ


「このやう尓多からをもつ

 このようにたからをもつ


とハてんとふくらすゞ

とはてんとふくらすず


めでハ奈ふてきつい

めではのうてきつい


ふくしやすゞめときた

ふくしゃすずめときた


「けんどん者゛ゝこのてい

 けんどんば ばこのてい


をミてうらやま

をみてうらやま


志可゛る

しが る


「あいつらハうまい

 あいつらはうまい


事 をしおつ多

ことをしおった


奈んでも

なんでも


こつちへして

こっちへして


こませ

こませ


多いもの多゛

たいものだ


「こと王りいふて

 ことわりいうて


可へさしやれ

かえさしやれ


ぬ可

ぬか

(大意)

「打出の小槌はなかなかよいものだが、

このような散財をしてくれては、

ほんとうに困ったものじゃ」

「このような宝物をもらうとは、

まったく、ふくら雀ではなくて、

とんでもない大金持ちの雀ではないか」

「けちんぼ婆は、この様子を見て

羨ましがった

「あいつらはうまいことをしおった。

なんでもよいから、こっちへ

してもらいたいものじゃ」

「(こんなにたくさんの宝物を)断って

返すことはできぬものか」

(補足)

「正」「善」「惡」が袂や背中に記されています。

「うらやま志可゛る」、「こ」「と」は区別がやっかいであることは何度も記しましたが、ここの「う」も一画目から二画目へのつながりが「こ」にも「と」にもみえます。

「こつちへしてこませ」、ひとつひとつ丁寧に分解するように読まないとよくわかりません。

 正直夫婦はたくさんの金銀宝物を目の前にしても、派手に喜んではいないような困った様子、に描いたのかもしれません。

 それに比べて慳貪婆は心底、うらやましい〜といった様子。

 

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