2023年10月17日火曜日

桃太郎発端話説 その55

下P2P3 東京都立図書館蔵

下P2

(読み)

「さるハ又 さる里可うを多゛しやる奈

 さるはまたさるりこうをだ しやるな


可うしんさ満を多゛いし尓して

こうじんさまをだ いじにして


ミざるき可ざるい王さるを

みざるきかざるいわざるを


和すれず志ん尓よのつ起尓

わすれずしんにょのつきに


てをちゞめこゝろの多ず奈

てをちじめこころのたずな


をくゝりざる尓し多可゛よい

をくくりざるにしたが よい


「きじハ三 十  六 可せんの

 きじはさんじゅうろっかせんの


や可もちのう多を

やかもちのうたを


思 ひきじも

おもいきじも


奈可ずバう多れ

なかずばうたれ


ましといふ

まじという


こと王ざ

ことわざ


を和すれ

をわすれ


まいぞや

まいぞや


「いぬハこつち尓いるもの奈れバ

 いぬはこっちにいるものなれば


ゆる\/とおしへ

ゆるゆるとおしえ


ませ う

ましょう

(大意)

「猿は、よいか、小賢しさを出すでないぞ。庚申様を大事にして

見猿聞か猿言わ猿を忘れず、余計なことには手を出さず、

心の手綱をしっかりと括(くく)っておくことが大切じゃ」

「雉は、三十六歌仙の家持の歌のように故郷を大切にし、

雉も鳴かずばうたれまじの諺を忘れず、無用なことは慎むのじゃ」

「犬はわしと一緒に住むのであるから、

ゆっくりと教えよう」

(補足)

「猿利口」、辞書にないだろうとおもったら「こざかしいこと」とありました。なんでも調べて見るものです。

「庚申様」、三猿(さんえん)の形を刻んだ青面金剛像(しょうめんこんごうぞう)で祀られた神様。悪霊災厄退散の神様。

「真如の月」、『〘仏〙 真如が一切の迷いを破ることを月が闇を照らすのにたとえた言葉』とありました。

 正直爺さんがこれからの人生訓を教えているところ。

什器があっさりと描かれています。右端の燗銅壺ににた燗徳利を入れておくようなものがあります。角が丸くなっていてなかなかの高級品。

 

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