下P1 東京都立図書館蔵
(読み)
宇治拾遺ニ曰(うぢし うゐい王く)
うじしゅういいわく
今 ハむ可し女 あり春ゝめのけ可゛志多るを
いまはむかしおんなありすずめのけが したるを
やし奈いて者奈ちけれバおんをむ
やしないてはなちければおんをむ
くふ多めひさごの多年をく王へ
くうためひさごのたねをくわえ
き多るその多年をうへ多る尓ひさご
きたるそのたねをうえたるにひさご
おゝくいで起てミ奈うち尓者く
おおくいできてみなうちにはく
まいありと奈りの女 こ連を
まいありとなりのおんなこれを
うらやミむり尓すゞめ尓け可゛
うらやみむりにすずめにけが
させてやし奈ひ者奈ち个る
させてやしないはなちける
尓ぞこのすゝめもひさごの
にぞこのすずめもひさごの
多年をく王へき多るうへ个れ
たねをくわえきたるうえけれ
バ者多していで起尓个りさてひさ
ばはたしていできにけりさてひさ
ごのうちよりどくむしおゝく
ごのうちよりどくむしおおく
いでゝ可の女 をい多くさし个る
いでてかのおんなをいたくさしける
このつゞらも可のふくべよりいで
このつづらもかのふくべよりいで
多る者奈し奈りものうらやミハせまじ起もの奈り
たるはなしなりものうらやみはせまじきものなり
(大意)
宇治拾遺物語に曰く、
今ではもう昔のことだが、ある女がいた。
怪我をした雀を養って放したところ、
その恩に報いるためひさごの種をくわえてやって来た。
その種を植えてたところ、ひさごがたくさんなって
その実の中に白米が入っていた。
隣の女がこれを見て羨み、無理に雀に怪我をさせ
養い放したのだ。
この雀もひさごの種をくえてやって来た。植えてみると
おもったとおり育った。ところがひさごの中から出てきたのは
たくさんの毒虫で、この女をひどく刺したのだった。
この葛籠のはなしはも、もとはこのふくべ(ひさご)からの噺
である。物事、羨むことはするものではない。
(補足)
「おんをむくふ多め」、「こ連をうらやミ」、「く」と「う」がほとんど同じかたちです。前後の流れで読むしかなさそうです。
慳貪婆の顔が般若のお面のようにもみえます。
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