2023年10月21日土曜日

桃太郎発端話説 その59

下P4P5 東京都立図書館蔵

下P5

(読み)

奈ん尓もくろ鬼 する

なんいもくろおにする


ことハねへほう可しの

ことはねえほうかしの


こ可゛多奈ざいく

こが たなざいく


でハねへのこぎり

ではねえのこぎり


かん奈与起まさ可り

かんなよきまさかり


のミこみやまの

のみきみやまの


春ミつ本゛多゛

すみつぼ だ


「まづまへい王ひ尓四方の

 まずまえいわいによもの


多起すいを

たきすいを


もめやう

もめよう


「そいつハふ川ちめ

 そいつはぶっちめ


印  とせずハ奈るまい

しるしとせずばなるまい


「うまいハ

 うまいは


\/

うまいは

(大意)

「なんにも苦労(黒鬼)することはねえ。

大道芸人の小刀を細工してのみ込む芸ではねえ。

鋸・鉋・斧(よき)・鉞(まさかり)・鑿(のみ)こみ山の墨壺だ」

「まず前祝いに四方(よも)の瀧水(たきすい)で一杯やろう」

「そいつは(宝物は)、奪い手に入れなければなるまい」

「うまいはうまいは」

(補足)

「のミこみやまの春ミつ本゛多゛」、墨壺で大工道具尽くしのセリフをしめています。「のミこみやま」は呑み込んだ⇒承知した、と放下師の小刀を呑み込むををうけての洒落。

「四方の多起すい」、四方の瀧水という銘酒。ネットで調べると今でもありました。「四方」がすぐには読めません。

「もめよう」、「もめる」に『⑤( →4の意から転じて)費用を負担する。おごる。「それは私が―・めまする」〈歌舞伎・けいせい壬生大念仏〉』という意味があります。

「ふ川ちめ印」、『ぶっち・める 【打っ締める】② 手に入れる。奪う。ものにする。「今夜あの娘を―・めて見せやう」〈滑稽本・東海道中膝栗毛•2〉』。印のくずし字は前にも出てきました。偏と旁が上下になっています。「印」は単なる語呂合わせ。

 大王の後ろにひかえる鬼が若いのか顔がかわいらしい。大王をのぞいて、他の鬼たちはチャッチャッチャと描きあげた感じです。

 

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