2023年10月12日木曜日

桃太郎発端話説 その50

下P1 東京都立図書館蔵

(読み)

「もゝんぐ王ア奈んどいふやう奈

 ももん があなんどいうような


奈まけ多事 でハ奈ひアゝ徒のもねへ

なまけたことではないああつのものへ


「奈んとすさまじ

 なんとすさまじ


可ろふ可や

かろうかや


「こうつるし

 こうつるし


あげられ

あげられ


てハそつ

てはそっ


ちのお尓ミゟ

ちのおにみより


こつちのこめ

こっちのこめ


可ミ可い多印

かみがいたしるし


い多いのねと

いたいのねと


き多

きた



「アゝ

 ああ


多すけ

たすけ


給 へ\/

たまえたまえ

(大意)

「ももんがぁなどというふざけた我らではないぞ。

(この慳貪婆は)角もねぇ」

「(こめかみをつかまれている慳貪婆の痛がりようは)なんとも

凄まじいものだ」

「こんなに吊るし上げられては、そっちの鬼の身より

こっちのこめかみがいた印の痛いときたぞ」

「あぁ助け給え給え」

(補足)

「事」のくずし字は、平仮名「る」のようなかたち。

「印」のくずし字は、偏と旁が上下になるくずし字はたくさんあって、印もその一つ。

「給」のくずし字は、バネの螺旋のように2重にクルクルまわします。

 北斎の特徴はこのような絵をみるとよくわかります。あらっぽく勢いよく描いてはいますが、鬼たちの一瞬の動きをとらえていて、まさに連続撮影した分解写真のひとつであるようにもみえますが、北斎のほうが何倍も生き生きしています。

 

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