2023年10月16日月曜日

桃太郎発端話説 その54

下P2P3 東京都立図書館蔵

下P3

(読み)

「おひとまこいの御志 う

 おいとまごいのごしゅう


ぎ尓せ起そろでちと

ぎにせきぞろでちと


せりふをこじつけませ う 

せりふをこじつけましょう


「きじれい可王らず王ん王の

 こじれいかわらずわんわの


お尓ハへまひこめとびこめ

おにわへまいこめとびこめ


きや川\/ と小ざるや

きゃっきゃっとこざるや


いぬころ

いぬころ


きし可いふ

きじがいう


「志゛しんの

 じ しんの


と起ハ

ときは


さつそく

さっそく


御志らせ

おしらせ


申  ませ う

もうしましょう


「多ん\/の

 だんだんの


御きやうくん

ごきょうくん


あり可゛多ふ

ありが とう


ぞんじ

ぞんじ


ます

ます


御ふう婦

ごふうふ


の御おんハ

のごおんは


和すれま

わすれま


せ奴

せぬ

(大意)

「お暇乞いの御祝儀に、節季候(せきぞろ)で

ちょっとセリフをこじつけて踊りましょう。

〽雉はいつもとかわらず、

わんわのお庭へ

舞い込め飛び込め、

きゃっきゃっと、

小猿や犬ころ」

雉が言う

「地震のときは早速お知らせ申しましょう」

「かさねがさねのご教訓、

ありがとう存じます。御夫婦の御恩は

忘れませぬ」

(補足)

 会話のセリフは、きし可いふ、とあるように誰のものかを示すことはほとんどなく、セリフの内容で判断するしかなさそうです。「」で記されている順番や場所とはあまり関係ないようです。

「きや川\/ と小ざるや」、猿の鳴き声「きゃっきゃっ」なのですが、字面からはちっともそんな雰囲気がありません。「小」猿は「子」でしょうし、かたちは変体仮名「尓」です。

「きし可いふ」、一見するとよくわからないのですが、「」の前なので「言う」と予想。

「多ん\/の御きやうくん」、「うくん」が読みづらくなんとか御教訓とわかると、多ん\/がなんだろうと。ちと考えてこれは「多゛ん多゛ん」ではないかな、辞書で調べるとありました。それに島根の方言にだんだんがあったこともヒントになりました。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿