2018年10月31日水曜日

紙漉重宝記 その82




P.31


(読み)
だあよ、とゝうハ
だあよ、とゝうは

多尓へ可ミを
たにへかみを

取 にいきやつ多けへ
とりにいきやつたけへ

ついもどりや
ついもどりや

志やるまあ
しやるまあ

こん奈こよ
こんなこよ

おちやあるな
おちやあるな

(大意)
「おっかぁ、とうちゃんは谷へ紙を取りに行ったよ。すぐには戻ってきはしないよ」
「息子よ、落ちんじゃないよ」


(補足)
母と息子の会話です。

「奈」(な)と「留」(る)の変体仮名がくずし方にもよりますが、わかりにくといえばわかりにくい。

 全頁の紙干しをしながら左側を見ていた御婦人は子守をする母と息子を見ていたのでした。
母親も子ども二人も裸足です。
子どもの着物には継当てがあります。山里では実際はもっと継当てだらけの着物だったのでしょうか。それともそこそこ継ぎのない着物だったのでしょうか。母親には継ぎが見当たりません。
気になってこれまでの絵図を見直してみました。
継当てのある着物はこの子どもだけでした。

子は谷へ行った父を、母は谷へ落ちるなと子を心配しています。
いったいどんなところで紙を干しているのでしょうか、次頁でわかります。

Reports on the manufacture of paper in Japan にこの頁の絵はありませんでした。
このレポートは紙原料の植物や紙漉きの作業に関係のないこういった場面の絵は描いていないのです。


0 件のコメント:

コメントを投稿