2018年10月19日金曜日

紙漉重宝記 その70




P.28 其二 上段  7行目〜12行目


(読み)
又、 春起可く類
また、すきかくる

事、 先 のごとし。馴るゝ尓
こと、さきのごとし。奈るるに

随  ひ至極 早 きもの也。
志多かひしごく者やきものなり

紙 くさ少 奈く、漉 可゛多
かみくさ春くなく、すき可゛た

き時 ハ、者じめの製
きときは、はじめのせい

の古゛とく春べし
のご とくすべし


(大意)
また同じように紙を漉き、
これを繰り返す。慣れるにしたがい
この作業は大変に速くなるものである。
紙の原料が少なくなり漉きにくくなってきた
ときには、作業の最初にしたように(楮苧とトロロアオイを)混ぜる。


(補足)
「馴」、旁「川」は間違えませんが偏「馬」がわかりません。
「随」、「阝」+「辶」+「有」。うーん、形で覚えるしかなさそう・・・。
「至極」、よくでてきます。「至」が?でも「極」が読めれば、見当がつきます。
「先のごとし」、「こ」の下部分が「と」の出だしとくっついてます。

 作業の流れは、こんな具合でしょう。
1.漉き船の中で楮苧とトロロアオイを混ぜる。
2.漉き桁(入子輪・外輪・簀)で紙を漉く。
3.漉き終わったものを、左の「けたもたせ」に立てかけ水を切る。
4.もう一組の漉き桁で漉く。
5.それを、けたもたせに立てかけるときに、同時にもう一方の手で先の水を切っていたものと入れ替える。
6.水を切り終わった漉き桁から紙をはがし、背後の紙床(しと)に重ねる。
7.空になった漉き桁で再び紙を漉く。
これを繰り返し、漉きにくくなってきたら、原料を足して、漉いてゆく。

 大変な作業です。手は当然冷えるので、本文中には記されてませんが
漉き船の影にかくれた湯桶から、モウモウと湯気が立ち上がっています。
すぐに冷めてしまうはずで、湯を沸かし続けていたことでしょう。

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