2018年10月20日土曜日

紙漉重宝記 その71




P.28 其二 中段 


(読み)
春多多る紙
すきたるかみ

何 枚 もかく
なんまいもかく

のごとく重 ぬ
のごとく可さぬ

べし
べし

け多も多せ
けたもたせ

箱 間半 二一 間 少 し
はこまなかにいっけんすこし

せまし
せまし

(大意)
漉きおわった紙は何枚も図のように積み重ねること。
桁もたせ。
箱(漉き船)の大きさは、前後は半間(三尺)で横幅は一間より少し小さい。


(補足)
漉き船の説明がわかりづらい。
箱とは漉き船のこと。
間半(まなか)、広辞苑に「【間中・間半】①(西日本などで)1間(いっけん)の半分。また、畳やむしろの半分。」とあります。ついでながら②として九州南部地方では「便所」の意。
続いて、「一間少しせまし」とありますから、間半より長いのでこちらが長辺となります。
おおざっぱに、漉き船の大きさはおおよそ畳一畳分の大きさとなります。
実に作りのしっかりした見事な漉き船です。

「ごとく」がここでも、「ごと」がくっついています。
「重」(かさ)、ふりがながあるのでなんとか読めました。

「重ぬべし」、「ぬ」は否定の助動詞の印象が強く、ここでも重ねてはいけないと意味しているように勘違いしてしまいます。図を見れば一目瞭然で、そうでないことがわかります。ここでは「確かに」、「きっと」というような意でしょうか。

 漉き船のこの作業は、現代では立ち仕事ですが、この絵図では座ってます。それとも膝立ちでしょうか。立ち仕事でないとすると、けたもたせに立てかけ、背後の紙床(しと)に積み重ねる作業がいっそう辛いものになるはずです。馴れるにしたがいこの作業は大変に速くできるようになるとありますから、腰痛持ちのわたしとしてはどうしても腰への負担を考えてしまいます。



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