P.24 楮苧擲く図 10行目〜最後まで
(読み)
此 音 遠 くきこへ天いとゝ゛
このをととをくきこへていとど
物 さびしき山 家
ものさびしきさん可
身尓志ミゝ゛と哀 也
ミにしみじみとあハれなり
擲 臺 板 長 サ五尺 幅 三 尺 余 り
たたきだいいたながさごしゃくはばさんしゃくあまり
厚 サ三 寸 五分 樫 桜 尓て作 也
あつささんすんごぶ かしさくらにてつくるなり
(大意)
この音が遠くから聞こえてくるのだが
人里離れたずっと山の奥の家で楮苧をたたいている人たちのことをおもうと
ひとつひとつの音がしみじみと身にしみて、哀れな気持ちになってしまう。
たたき台板長さ五尺(約150cm)、幅三尺(約90cm)余り
厚さ三寸五分(約10.5cm)、樫・桜にて作るなり。
(補足)
「遠」のくずし字、「辶」が「土」の下に「と」のようになっています。
「物」のくずし字は「お」のようにみえます。しかし「お」の変体仮名は「於」です。
「哀」、振り仮名がないと読めません。
たたき台は樫・桜で作るとあります。桜はお経や絵図などの版木として用いられました。一度刷って冊子ができてしまうと、表面を全て削り取り、再び彫って再活用します。両面を使って、これを数回繰り返し、最後は薪となりました。余談ですが、京都の黄檗宗萬福寺に鉄眼版一切経版木6万枚があります。もう半世紀近く昔、半日近くこれらの現物に対面し感動したのを今でも覚えています。
桜も硬い材で、粘りがあり版木にはピッタリでしたが、樫はそれよりも硬い。加工する刃が欠けることもあります。150✕90ですから4人がけ食卓テーブルサイズです。図でもそのような感じに描かれています。
そして厚さがなんと約10cm、樫のこれだけ大きな材を探すのは現在ではなかなか大変です。当時でもそうなかったはずで、幅の狭いものを2,3枚はいで一枚にしたものでしょう。
重さはきっと軽く100kgを超え、150kgくらいあったはずです。ということはたたき台を据える床も頑丈でなければいけなかったはずで、土台からしっかりとした工事をしていたことになります。
このたたき台は見開きで描かれ、大変に立派で大切にされていることがわかります。
次回は文章は少ないので、絵図等の感想をおもに記してみたいとおもいます。
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