2018年10月10日水曜日

紙漉重宝記 その61



P.25 擲棒之図


(読み)
擲  棒  之図
多ゝき本゛うのづ

長 サ 三 尺  先キハ四角 元 ハ丸 し
ながさ さんじゃくさきはしかくもとはまるし

(大意)
たたき棒の図

長さ三尺(約90cm)。先は四角、元は丸い。


(補足)
たたき台の幅三尺ですから、たたき棒もそれに合わせたのでしょうか、同じ長さになってます。
向かい合いで叩く作業では、向き合う相手にうっかりすると届いてしまうかもしれません。危ない!
絵図では、たたき台とたたき棒の長さの加減が正確に描かれているようにおもいます。

 ハチマキ姿のおじさん、表情が朗らか楽しそうです。竹刀の持ち手と同じように握っています。
たたき台の脚の隅が面取りしてあり、このたたき台の造りがきっと、丁寧なものであったことがうかがわれます。

 作者は「身尓志ミゝ゛と哀也」とありますが、部屋の中で作業をしている本人たちは
たたき棒の音にあわせて、民謡など歌っていたのかもしれません。
ハチマキおじさん、唇が半開きで何か話しながらの作業かやはり唄を口すさんでいそうです。
顎の髭あとも細かく描き、絵師の入れ込み具合が伝わります。

 籠の中には、これからたたくソソリがたくさんあります。
たたき終わったものが手前の籠のほうでしょうか。

 この見開き一ページの絵図からは、「身にしみじみと哀れ」を、わたしは感じません。
さぁこれから、いい紙を作るぞという、意気込みと楽しさが醸し出されているのです。

一方、Reports on the manufacture of paper in Japan の
13_Pounding the "sosori はどうでしょうか。



 なにか良い点を探そうと、くまなくみるのですが、うーん・・・、ない。
あえて云うなら、こんなふうな作業をするということぐらいです。
たたく作業の趣なんぞ、これっぽっちもない。
いけないいけない、悪口雑言が続いてしまいそうです。やめます。

 この紙漉重宝記の絵図で見開きのものは三箇所しかありません。
二箇所はこのあと出てくる風景です。
もうひとつがこの頁になるわけですが、作者の特別な思い入れがあるような気がしてなりません。






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