P.29 1行目〜2行目
(読み)
一 寒 漉 、とろゝ計 尓て製 春る越生漉 と唱 へ
ひとつ 可ん春き、とろろ者゛可りにてせいするをき春起とと奈へ
書 物 に用 ひ年 久 敷 所 持春る尓
しよもつにもちいとしひさしくしょじするに
虫 入 ら須゛、上 品 尓して石 州 紙 の妙 也 。
むしはいらず 、じょうひんにしてせきしゅうかみのみょうなり。
春 漉 、のり加 へしハ請 合 可゛多し
者る春き、のりくハへしはうけあいが たし
(大意)
ひとつ (真冬に漉く)寒漉きの楮苧とトロロアオイだけでつくる紙を生漉(きすき)という。
書物の紙に用い、何年所持していても虫に食われず、石州紙の最上品でありすばらしいことである。
春になって(米)のりを加えて漉いた春漉きの紙の品質は保証しがたい。
(補足)
文章の文頭に「一」がおかれ、それがいくつか段落ごとに続いています。
一つ書きといいます。古文書の典型的な書き方で、現代でも用いられています。
ひとつ何々、ひとつ何々、と段落が増えても、二、三、となることはありません。
「寒」、振り仮名があるので読めました。
「久敷」の「敷」は頻出です。夥敷(おびただしく)、宜敷(よろしく)、六ケ敷(むつかしき)、悪敷(あしく)、間敷(まじく)、怪敷、などなど
「石州」、「州」が「刀」三つとなってます。異体字です。
「春」のくずし字が、わたしはちと苦手なのです。
今年の5月に、市博物館で地元の有名な約156年前の古文書を撮影させていただきました。
100頁程もあります。和紙の薄さ、美しさ、墨書きの際立った凛々しさ、頁をめくるたびに緊張感が増しました。紙が薄くて頁を数箇所とばしてしまい、再度撮影しました。
虫喰などひとつもなく、保存状態の良かったことは勿論、紙の品質も非常によかったのだとおもいます。どこ産の紙なのでしょうか。
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